「『無駄なこと』はしないのか?」

ラクス 「議長のいう『戦いの無い世界』、『人々がもう決して争うことのない世界』とは…生まれながらにその人の全てを遺伝子によって決めてしまう世界です、おそらく」
キラ 「それがデスティニー・プランだよ」
アスラン 「生まれついての遺伝子によって人の役割を決め、そぐわない者は淘汰・調整・管理する世界だ」
メイリン 「『淘汰』…『調整』!?」
アスラン 「そんな世界なら、確かに誰もが本当は知らない自分自身や未来の不安から解放されて、悩み苦しむこと無く生きられるのかも知れない」
キラ 「自分に決められた運命(さだめ)の分だけね。…望む力を全て得ようと、人の根幹=遺伝子にまで手を伸ばしてきた僕達コーディネイターの世界の…究極だ」
ラクス 「そこにおそらく戦いはありません。戦っても無駄だと…あなたの運命(さだめ)が無駄だということを皆が知って生きるのですから」
ムウ 「そんな世界で、奴は何だ? 王か?」
マリュー 「運命が王なのよ。遺伝子が。…彼は神官かしらね」
アスラン 「『無駄』か……」
キラ 「本当に『無駄』なのかな」
ムウ 「『無駄なこと』はしないのか?」
アスラン 「俺は…そんなに諦めがよくない!」
キラ 「…だよね」
カガリ 「わたしもだ!」
ムウ 「俺も……かな」
マリュー 「そうね。わたしも」
メイリン 「ん!」
キラ 「宇宙(そら)へ上がろう、アスラン。僕達も!」
アスラン 「キラ?」
キラ 「議長を止めなきゃ。未来を創るのは、運命じゃない」
アスラン 「ああ!」

▼すっかりアークエンジェルに馴染んでいるムウに萌え。皆もムウ扱いしているんでしょうね(笑)。
▼皆さん、色々と語りあっていましたが、メイリンの「ん!」で会話の内容が一瞬頭の中から全て吹き飛びました。この子かわいすぎ♪
 それとラストシーン、何だか別のアニメを見ている気分になりました。熱く握手を交わすキラとアスラン。
▼さて、前作ではイージス・ジャスティスと二度も自爆を試みた、自爆大好き(=さっさと色々と諦めちゃう)なアスランさんは突発的に叫びました。
「俺は…そんなに諦めがよくない!」と。
 当然ブリッジの空気は固まります。
『ここはツッコムところなのか?』
 皆、アスランさんを見つめて黙ってしまいました。
 とりわけラクスのあきれたような目つき。隣で優しく笑っているアスランさんの親友キラの表情と対比すると、笑いがこみあげて仕方ありません(ラストのガッチリ握手も妙に可笑しかったですが。君達キャラが違うよ、と/笑)。
 …というわけで、この後に続くメイリン気合入れのシーンと合わせて、今回はここが一番の和みどころでした。
▼「淘汰」「調整」というアスランの言葉を反芻するメイリンの声に刺激され、ムウはファントム・ペインのことを思い出していました。
 ファントム・ペインを作り出すためにエクセテンデット候補の無数の子供達が「淘汰」されたことは以前作中で語られました。
 また、ファントム・ペインのメンバー達も戦いに専念できるよう記憶を「調整」されていました。
 つまり、デスティニー・プランとエクステンデット計画は、その根幹において結構似た思想に支えられているかも知れないということを、今回のムウの回想は示唆しているのではないか、と思うのです。もしかすると、同じ研究機関が関わっているのかも知れません。
 さて、ここで思い出して欲しいのは、議長の前身が遺伝子の研究者だったということです。
 政治家ではなく、官僚ですらなく、学者さん。
 そんな一介の学究が三十代にしてプラント最高評議会議長という一国の国家元首にまで登りつめた。
 もしデュランダル個人の力でそこまで成り上がったというのならば、それは出来すぎではないでしょうか。
 むしろ、何らかの勢力の後押しがあったと考える方が自然です。
 では、それはどのような勢力なのでしょう。
 これは何の根拠も無い妄想にすぎませんが、かつてファースト・コーディネイター=ジョージ・グレンを誕生させた集団。かれらについて、本編では何も語られていません。名称も消息も。
 彼らのしたことではっきりと分かっていることと言えば、ジョージ・グレンを世に出して、地球世界を混乱に陥らせる契機を造ったことくらいです。
 その彼らがエクステンデット計画や議長のデスティニー・プランに力を貸しているとするならば。
 SEEDシリーズ第三部では、かれらが真の敵として表舞台に姿を現すのではないでしょうか。
 …というか、次回作ありますよね?(←先走りすぎです/笑)
▼ところで、今回披露された(といっても、実はまだラクス達の推測段階なのですが)「議長の目的」=「デスティニー・プラン」は以前PHASE-13の感想で予想したものとほぼ同じで、それゆえあまり意外性はありませんでした。
 PHASE-13の感想で当該部分を書いた時、「超管理社会」として念頭にあったのは、ジョージ・オーウェルの『1984年』で描かれた世界です。
 『1984年』は、人間が完全に社会の部品となっているような超管理社会を舞台にしたSFで、体制を維持するためには家族や恋人どうしの密告も日常茶飯事で、情報操作だってありきたりのこととして描かれています。
 また、敵は国外のみならず、党によって内側にも故意に製造され、人々の怒りの情動を煽り、そのことで社会の結束を維持していこうとするそんな世界です。
 しかも地球世界は三ブロックに分かれて抗争しているのですが、(直接は登場しませんが)どの勢力の事情も似たりよったりという救いの無さ。
 でも、かなり面白い小説です。お勧めですよ。

[17-08-20]

「ジブリールを逃がした…俺達の責任だ」

ルナ 「何で!? 裏側からって、そんなの無理じゃない! どうやって!?」
レイ 「…奴らは廃棄コロニーに超大型のゲシュマイリヒパンツァーを搭載して、ビームを数回に屈曲させたんだ」
シン 「そんな……」
レイ 「このシステムなら、どこに砲があろうと屈曲点の数と位置次第で、どこでも自在に狙える。悪魔の業だな」
シン 「そんな……そんなことを!」
レイ 「ジブリールを逃がした…俺達の責任だ」
シン 「……ジブリールを逃がしたって……それは!」
レイ 「……何であれ、俺達は討てなければならなかったんだ」
シン 「くっ」

▼この赤服三人組の会話で、「俺達の責任」と言って責任を分散し、ジブリールのシャトルを落とせなかったルナマリアの心の負担を軽くすべく配慮しているあたり、レイが結構男前に見えました。
▼以前、ルナマリアが任務でキラ達とアスランの会話を盗聴したことがありましたよね。
 その後、ルナマリアはタリアに結果を報告しました。今回PHASE-44で暴露された偽ラクスに対する彼女の反応について書こうと思って、その時の会話の内容を確認しようとPHASE-27(届かぬ想い)を観直したのですが……ちょっと意外なものを発見しました。
 タリアがルナマリアの盗撮したアスラン達の写真を眺めているシーンに続いて、議長が「うーむ」と唸りながらPCを眺めているシーンがあるのですが、そのモニタに映っていたのは、デストロイの設計図と…そして今回プラントのコロニー群を灼き払ったレクイエムの説明図でした。
 今回、議長が節目となる幾つかの場面でニヤニヤしていたのも、レクイエムの詳細について知っていたからなのでしょうね。もちろん、レクイエムの惨禍の衝撃で、偽ラクスのことを人々の念頭から追い払えるということもあったでしょうが。すなわち、「運命は自分に味方している」という気分でいるのではないでしょうか。
▼それでは、(偽ラクスのこと以外で)なぜ議長はレクイエムの発射を喜ぶのでしょう。
 それはおそらくナチュラルに対するプラント、すなわちコーディネイターの憎悪を掻き立てることができるから。
 前作SEEDの血のバレンタイン事件、そしてアラスカ戦後のパナマ攻略戦でZAFT将兵が示した復讐心・憎悪を思い出してください。
 プラント本国を攻撃され、無辜の民衆が大量に殺された今回の復讐心は、あの時の比ではないでしょう。
 ナチュラル殲滅を言い出す人々が圧倒的多数を占めてもおかしくありません。
 そして、議長はその世論に乗るだけでよい。
 思うに、議長がデスティニー・プランを進めるのなら、ナチュラルの存在は邪魔になるはずです。
 あらかじめ遺伝子を調整されて生まれてくるコーディネイターなら、「遺伝子で全てを決める」デスティニー・プランの中に組み込むことは容易でしょう。
 ところが、自然に生まれてくるナチュラルの場合、そうではないのですから。
 ナチュラルについては不確定要素だらけです。
 ナチュラルが社会の大多数を占めるなら、とてもデスティニー・プランなど機能しません。
 だからナチュラルを殲滅する。
 ただ、問題はコーディネイターに頑固な不妊傾向があることです。コーディネイターだけの社会では子孫を作ることができない。
 だからこそ、議長は一部ナチュラルの支持を得るべくユーラシア連邦の解放などに尽力したのではないでしょうか。
 かれらを生かしておいて将来のコーディネイター(第一世代)を生み出すための母体とするために。

[17-08-21]