爆炎はやがて勝者を決める

 ロゴスを討つ。
 新たな夢に熱狂する世界。
 その狂乱の中、たった一文、届けられた命令。
 二人が撃ち合わねばならないその訳は。
 爆炎はやがて勝者を決める。
 次回、機動戦士ガンダムDESTINY「悪夢」。
 自由の海へ駆け抜けろ、アークエンジェル!

▼今回、シンがキラの戦い方を研究していたという伏線、及びキラにストライクフリーダムという新機体が用意されているという公式サイトのアナウンス。
 そして、「勝者を決める」という次回予告。
 キラがストライクフリーダムに乗り換える物語上の必要性から、九分九厘、次回でフリーダムは破壊されるのでしょうね。
 問題は、キラが撃墜されるその回のタイトルが「悪夢」となっているということ。
 「悪夢」という言葉の持つイメージから少し考えてみましょう。
 ライヴァル・キャラが倒れる場面は、主人公にとって断じて「悪夢」ではありませんよね。大殊勲なのですから。
 逆に言えば、主人公が悪役に倒される場面は「悪夢」と呼ぶに相応しいでしょう。
 ということは──
 主人公=キラ。
 もしくは、主人公=カガリ。
 と表明されたも同然ですね(笑)。

 主人公やヒロインという称号は、本質的にはどうでもいいものです。
 問題は好きなキャラの出番なのです。
 ただ、そのキャラが主人公やヒロインならば、物語に露出する回数は必然的に多くなるでしょう。
 だから、キラあるいはカガリが主人公だと嬉しい。
 彼らの登場シーンが多くなるから。
 主人公が誰か、この感想コーナーでたまに気にしているのは、要するにそういうことなのです。

 …でも、キラが撃墜されるなら、前作の時のように、しばらく(1回か2回くらい)お休みになるかも知れないですね。その分、「キラを心配するカガリ」の出番が増えて万歳三唱かも知れませんが(笑)。

「彼らこそが平和を望む私達全ての真の敵です!」

デュランダル 「なのにどうあっても、それを邪魔しようとする者がいるのです。それも古の昔から。
 自分達の利益のために戦えと! 戦えと! 戦わない者は臆病だ、従わない者は裏切りだ! そう叫んで常に我らに武器を持たせ、敵を作り上げて、討てと指し示してきた者達!
 平和な世界にだけはさせまいとする者達!
 このユーラシア西側の惨劇も彼らの仕業であることは明らかです!
 間違った危険な存在とコーディネイターを忌み嫌うあのブルーコスモスも、彼らの作り上げたものに過ぎないことを、皆さんはご存知でしょうか。
 その、背後にいる彼ら……そうして常に敵を作り上げ、常に世界に戦争をもたらそうとする軍需産業複合体、死の商人ロゴス!
 彼らこそが平和を望む私達全ての真の敵です!
 ……私が心から願うのは、もう二度と戦争など起きない平和な世界です。
 よって、それを阻害せんとする者、世界の真の敵、ロゴスこそを滅ぼさんと戦うことを、私はここに宣言します!」

▼議長、かっこいいー♪
 どこか胡散臭くもありますが(笑)、でも、そこがいいですよね。
 某スーパーエースくんはどうやら議長に心服したみたいで、今後の物語で彼は議長の掌の上で踊ることになるのでしょう。

「政治における成功の主たる要因は、そのくわだてを秘密にすることである。言葉と行動は一致してはならない」(7)

▼それにしても、サンライズ作品には陰謀論ファンの影がちらつくことがあります。
 『ガサラキ』の次の会話など、その最たるものでしょう。

ファントム 「あなたがたは今日本のあらゆる金融情報、つまりこの国の全資産をある特定の場所に集めている」
西田 「…それは今アメリカが為そうとしていることに対する反撃の矢とするため。斜陽の大国アメリカをして今一度覇権国家にのし上げようとする最終的な手段に対抗するための」
ファントム 「確かにアメリカはその意思を世界に知らしめるための標的として日本を選んだ」
西田 「これまでアメリカは自国の通商政策のスケープゴートとして、繰り返し日本を利用してきました。日本もまた唯々諾々としてアメリカの政策に従ってきました。…しかし、今度だけは座視できない。食糧という最終的手段に訴えてきた今度だけは」
ファントム 「…日本の全金融資産二十兆ドルをもってすれば、アメリカの経済も破滅的なインフレーションに陥れることができるでしょう。しかし、それは諸刃の剣。アメリカ経済の崩壊は、すなわち日本経済の崩壊をも招いてしまうのではないですか。あなたがたは国家的な自殺の道を歩もうとなさっているのですか」
西田 「経済の崩壊…もとより望むところです。そのために私達は準備を進めてきたのです。三年の間、国民を貧しさに耐えさせるための」
ファントム 「…それが独裁による強権」
西田 「今我々はたとえ国民に貧しさを強いるとしても、少なくとも三年の間は凌ぎ切る自信があります。しかし、同じ三年間の破滅的経済不況をアメリカは耐えることができるでしょうか」
ファントム 「三年…いや、一年でアメリカはバラバラになってしまう。恐ろしいことを考える。……だが、本当にそれだけがあなたの目的なのですか。私はあなたがそれだけの人間とはどうしても思えません」
西田 「…確かに、私の個人的な目的はもっと別の所にあります。それは……この国を貧しくすること」
ファントム 「貧しく?」
西田 「この二百年間、人はただひたすら発展の幻想に踊らされてきました。しかし、宴は終わったのです。今我々が為さねばならぬのは、人が歴史を刻み始めてから初めて自らの意思で目の前の坂を胸を張って堂々と下ること
ファントム 「…発展の幻想を捨て、坂を下る。……あなたの理想は美しい。しかし、その理想をいったいどれだけの人間が共有できるでしょうか。私は見てきました。これまで、どれほど多くの人間が夢果て、絶望していったかを」
西田 「あなたは勘違いなさっている。確かに私の行いは失敗するかも知れない。しかし、たとえ失敗したとて、私が為そうとしたという事実だけは残ります。その事実こそが次の時代の可能性を生むのです」
ファントム 「……次の時代。世代を積み重ね、刻の中を生きていく。……次の時代」
(『ガサラキ』22話「権化」より)

 西田老人燃え…というわけで、思わず長く引用してしまいました。この会話のもう一方の当事者であるファントムという人物は、物語に出てくる多国籍企業シンボルのCEOで、彼こそが『DESTINY』で言えばロゴスの最高幹部に相当する人物なのです。
 思うに、「次の時代」という言葉は『DESTINY』においてもキーワードとなりうるものではないでしょうか。
 なぜなら、コーディネイターには「次の時代」は存在しません。
 前作『SEED』でラクスが明言しました。

ラクス 「地球の人々と私達は同胞です。コーディネイターは決して進化した違うものではないのです。婚姻統制を行ってもなお、生まれてこぬ子供たち……既に未来を作れぬ私達の、どこが進化した種だと言うのでしょうか」
(『SEED』PHASE-41 ゆれる世界)

 種としての後継者を残すことができない以上、コーディネイターに明るい未来が待っているとは思えません。
 「我々には残された時間はわずかしかない」と前作でプラント最高評議会議長だったシーゲル・クラインは何度も口にしました。
 「時間がない」とは、すなわち、種として残された時間がごくわずかであるということではないでしょうか。
 言い換えるなら、このままでは結局、コーディネイター社会は人類史の中の仇花に終わってしまうだろう、ということです。
 そして、そのあたりにデュランダル議長の真の目的の一つが潜んでいるのではないかと想像しています。
▼それにしてもあの狼狽ぶり……ロゴスも意外に不甲斐ない。
 ロゴスよりさらに上位階梯の集団が存在しても不思議ではない気がしてきました。

「いったいだれが、また何ものが、見えざる勢力を打ち倒せるというのか。わが勢力の行動プランはおろか、その在り処さえも、すべての人には知りえない神秘のままである」(4)

[17-06-04]