「……これが『組織』。違いすぎる」

▼コーネリアに殺されているのは日本人なわけで、たとえファンタジーだと分かっていても気分の良いものではありません。思わずルルーシュの反撃に期待してしまいました。で、惨敗という結果にがっかり。……フィクションにのめり込みすぎるのは良くありませんね(笑)。

ルル「制圧された? こんな簡単に……ゲームにすらなっていないぞ!」
コーネリア「新宿のようにはいかなかったな、ゼロ。それとも真似した奴か? まあいい、すぐに分かる」
ルル「……これが『組織』。違いすぎる」

 どんなに傑出した才能の持主であっても、「個人」の力だけで「組織」に対抗することはとても難しいと思い知らされた今回のルルーシュでした。
 今回初めてそのことに気づいたようですから、おそらく彼はスポーツの団体競技とは無縁の生活を送っていたのでしょう。団体競技でワンマンチームが最後まで勝ち残るのは相当の難事ですよね。
 それに、息切れしながら階段を昇っていた前回のシーンを見ても、ルルーシュがアウトドア系だとはとても思えません(笑)。

ルル「条件が同じならば、負けはしなかった!」
C.C.「負け惜しみだな。それだけの条件を揃えるのも『力』のうちだ」
ルル「だったら揃えてやるさ」
C.C.「……」
ルル「ブリタニアに負けない俺の軍を! 人を! 国を!」

 「軍」って…「国」って……お遊びサークルを作るわけではないんだよ?とツッコミを入れつつも、その意気や良し!とも思ってしまうのでした。
 組織を作っていくストーリーというのは、燃えます。進取の気鋭に満ちた明治日本を舞台にした物語とか、大好きです。そういう意味では今度の『坂の上の雲』のドラマ化、今からワクワクして待っております。
 ……と、話が脱線してしまいました。
 ルルーシュがこれから作ると言っているのは、生き死にを分かち合う運命共同体なわけで、しかも敵はこの惑星の数分の一を支配する超大国です。レトルト気分でお手軽に作れるものではありません。十年、二十年どころではない時間と資金と努力が必要でしょう。
 たとえば、現実世界で、徒手空拳から身を起こし、自ら組織を育て、短期間で国家権力者の座を手に入れた代表的人物といえば、ドイツ「第三帝国」のアドルフ・ヒトラーですが、彼の場合、キリスト教暦1919年にミニ結社だったドイツ労働者党に接触してから、33年1月に43歳で首相になるまでには十年以上の歳月を費やしています。しかもその間、武装蜂起に失敗して(ミュンヘン・ビアホール一揆)、ランツベルク刑務所に収監されたりもしました。
 もっとも、この武装蜂起の失敗が、ヒトラーをして合法的な政権獲得の道へ進ませる転轍機の役目を果たしたのですが……ルルーシュの場合、対象は「皇帝の支配する」帝国です。合法的に権力を手にする術などありません。
 「内部から国を変えていく」と主張しているスザクは、その辺りのことをどう考えているのでしょうね。
 現在の皇帝独裁のシステムを徐々に変えていき、いつかは議会が権力を握る立憲君主制への移行を目論んでいるのでしょうか。
 もっとも、たとえそうであるにしても「名誉ブリタニア人」「元イレブン」と嘲られている彼にとっては難事業だと思いますが……いえ、確かに、第三皇女ユーフェミアの知遇を得、一応権力への足がかりはあるにはあるともいえますが……姫を騙くらかして、利用して、国の中でのし上がるというのは、個人的には見たいシチュエーションですが(笑)、「白の騎士」とやがて呼ばれる人物に似つかわしいとも思えません。はてさて、どうなることやら。
 スザクと違い、ルルーシュには「皇帝として登極する」という選択肢もあります(ありました)。

ルル「ブリタニアの皇族は次の皇帝の座を巡って常に争っている。……いや、争わされているんだ、あの男に!」
C.C.「しかし、それがブリタニアの強さでもある。そうして勝ち残った最も優秀な人間が次の皇帝になるのだから」

 この会話からすると、たとえ17位でも皇位継承権者である以上、ルルーシュにも機会はあったことになります。
 けれど、ルルーシュはそれを放棄した。父帝の掌の上で踊らされることが我慢できなくて……いえ、そもそも皇帝を決めるシステムそのものを蛇蝎のように嫌っているみたいです。良くも悪くも「普通の人」の感覚だったのでしょうね、今回の冒頭に出てきた当時の、ちびっこの頃のルルーシュは。
 とはいえ、現在のルルーシュの考え方はこんな感じです。

ルル『誰がいる? 俺の軍隊として動ける奴が』

 次回予告のナレーションの一部ですが、ルルーシュの内心の告白と見做しても差し支えないと思います。
 この台詞から察するところ、ルルーシュが「軍隊」として欲しいのは、苦楽を分かち合える「仲間」ではなく、自由に操ることのできる「手駒」にすぎないのではないかな、という気がします。
 たぶん、王城やカレンらゲリラ達を自分の「軍隊」に、と考えているのでしょうが、ルルーシュが利用しようとしている相手だって、感情を持った人間です。単なる「手駒」と思われていると気がつけば、良い気がするわけがありません。
 他人を道具と見做す今のままのルルーシュの考え方で上手くいくのか(ピカレスクルート)。
 それとも仲間作りに挫折して、考え方を改めるのか(王道ルート)。
 あるいは、ゲリラのメンバーも、ルルーシュのことを利用できる「頭脳」と割り切って手を組むのか(呉越同舟ルート)。
▼ところで、現在のルルーシュの立場自体、怪しくなってきたようです。

ミレイ「だからお見合いのことは……分かってる、アッシュフォード家を建て直したいって話は。でもね、お母さん……」

 アッシュフォード家の事情は冒頭で説明されていました。

廷臣「だがもうルルーシュ様の目は無い」
廷臣「後ろ盾のアッシュフォード家も終わったな」

 ルルーシュの血統の後ろ盾だったから、アッシュフォード家は立場を失った。
 そこから挽回する場合、(政略結婚によって)かつての政敵と手を組む、というのがかなり可能性の高い選択肢として存在します。
 ということは、その条件を整えるために、アッシュフォード家はルルーシュの後見から手を引く、ということになるかも知れません。
 うーん、次回以降の展開から目を離せませんね。

[18-11-18]
文責・てんま