「…殺されるくらいなら、行ったほうがいいです」

▼今回は議長について書くつもりでしたが、予定を変更してアスランとメイリンについて。

PHASE-36 メイリン語録
「追われてるの、あなた…。でも、どうして?」
「こっち」
「大丈夫です」
「基地のホストに侵入して、どこかで警報を出せれば」
「車、回します。見えたら出てください!」
「追っ手はほとんどが港です、今なら…。行ってください!」
「…殺されるくらいなら、行ったほうがいいです」

▼レイに撃たれ、怯えるメイリンに手を差し延べるアスラン。
 躊躇うことなくアスランの差し出した手を掴むメイリン。
 限りなく萌え燃えの映像でした、あの場面!

アスラン 「ごめん、でもこのままじゃ君が……!」

 アスランに言われて、コクコクと頷くメイリンがかわいいですね。
 その表情は「彼女を巻きこんでしまった」と悔やむアスランの心の負担を懸命に取り除こうとするかのようで、とてもいじらしく感じました。

メイリン 「で、でもどうする?」
アスラン「アークエンジェルを探す」
メイリン 「えっ!? だって、あの艦は」
アスラン 「沈んじゃいない。きっとキラも」

▼ちょっとタメ口のメイリンに萌え。
 ようやく自分の意思で動き始めたアスランにも。
 先週までの彼はグダグダと悩み、己の為すべきことも見えず、後輩のシンには見下され、周囲からは哀れみの眼差しを注がれ、かなり悲惨な状況でした。
 ですが『落ちるところまで落ちた』ということは、逆に言うならば『後は昇るだけ』ということでもあります。
 そして、そのことを象徴するかのように、アスラン──今まで周囲に流されるばかりだったもう一人の主役は、ようやく物語世界に自ら積極的に関わろうとしています。
 確かに、追われるままザフトを逃げ出した今も、多少は状況に流され気味と言えるかも知れません。
 ですが、アスランは「アークエンジェルを探す」と明言しました。
 この決心は大きいでしょう。
 逃げ出したまま何処かで隠棲するという選択肢だってあるのです。
 そうせずにアークエンジェルと合流する。
 それは「議長の目指す世界を認めない、阻む」という意思の現われなのですから。

アスラン 「さすが議長は頭がいいな。俺のこともよく分かってる。確かに俺は彼の言う通りに戦う人間になんかはなれない。…いくら彼の言うことが正しく聞こえても!」

▼このアスランの「頭がいい」という言葉には、アスランの内心を見抜いた議長の洞察力に対する感想の他に、決断を下すのが早い(あるいは見切りをつけるのが早い)ことへの羨望の意味も含んでいるのでしょう。
 実はこの場面で前作の台詞を思い出しました。

カガリ 「あんなもんで飛び出してくるとはね。スゴイな、あの子」
アスラン 「え……ああ」
カガリ 「いいのか。お前の婚約者だろ?」
アスラン 「『元』ね」
カガリ 「え?」
アスラン 「俺は馬鹿だから」
カガリ 「……ま、今気づいただけ、いいじゃないか」
アスラン 「え?」
カガリ 「でも、キラも馬鹿だと思うぞ、うん。やっぱコーディネイターでも馬鹿は馬鹿だ。しょうがないよ、それは」
アスラン 「……そうか……そうだな」
(『SEED』PHASE-42 ラクス出撃)

 色々と考えに考え、戸惑い、何度も思い悩み……そしてようやく結論に至る。
 しかもそうして辿りついた結論は、最初に抱いた感情に一致するものだった。
 すなわち、自分は単に無駄な遠回りをしていただけだった。
 ……というのが、己の信念に従い迷うことなくプラントを出奔したラクスの姿を見て、アスランの呟いた「俺は馬鹿だから」の意味だったと思うのです。
 別の言葉で表すなら、何度も道に迷った末にようやく求める場所に辿りついた、亀のような歩みの己への自嘲。
 『DESTINY』でも彼は何度も迷っていました。
 けれど、先述の通り、ようやく彼は動くことを──求める場所、己のいるべき場所に向かうことを決意したようです。

▼今回、アスランはミーアに助けられ、メイリンにも救われました。
 そして、前作での彼はカガリに心と命を護られました。
 これらのことから察するに、OPの女性達に囲まれたアスランの姿は、彼が彼女達に護られているということの暗喩だったのでしょうね。

[17-06-26]