PHASE-10感想

▼前作『SEED』において、当初、ディアッカは残忍で狡猾な性格とされていたのですが(公式サイトの紹介文)、いつの間にかその設定は消えていました。
 それと同様、始めの頃は明らかに腹黒そうだった議長の性格設定も変わったのかも知れない、と思ってしまった今日の『DESTINY』でした。
 いわゆる「迷いを捨てたシャア」ってこんな感じかな、というのがアスランに向かって熱く理想を語った今回の議長についての感想です。
 なので、このまま善人路線で突き進んでくれても一向に構いません(笑)。
 ただ、その場合、物語途中で暗殺されるというのが一番ありそうな展開かな、とも思います。それはちょっと辛いですね。とはいえ、悪人=ラスボス路線でも、結局倒されてしまうことには変わり無いわけですが……
 ともあれ、現時点では議長が最萌え・燃えキャラ状態です。

▼アスランの立場についてはアレです。某スペオペのアレ……自らの所属組織に囚われず、己の識見と判断と信念に基づいて行動できるというアレ……何だったかな……そうそう、QX、思い出しました。銀河調整官だ。第二段階レンズマン(笑)。
 というのはともかく、今回セイバーを託されたアスランのポジションは前作のキラと同じですね。ということは、この先いずれ彼が第三勢力を立ち上げることになるのでしょうか。ネオ・ザフトとか(笑)。

▼ミーア、かわいいですね。
 先週彼女を初めて見た時は「洗脳されているのかな」という疑問も湧いたのですが、ミーアはちゃんと自分のしていることを認識していますし、何よりはしゃいだり落ち込んだり、妙に謙虚だったり……普通に明るくてかわいい娘さんでした。OPでアスランに寄り添う姿からは、もう少しネットリした印象のキャラかな、と思っていたのですが(汗)。
 今週の彼女の振舞いも、議長に対する「実は腹黒」というイメージが薄らいだ一因です。
 議長が腹黒キャラなら、ミーアのことももっと歪めてしまうんじゃないかな、と思うのです。

▼それと……

議長 「しかし、想定していなかったわけではないが、やはりショックなものだよ。こうまで出番が少ないとはね」
姫様 「くそぉぉ!!(デスクを叩く)」
シン 「うぁぁぁっ!!(壁を叩く)」

[16-12-18]

「この機体を君に託したい」

ギルバート 「この機体を君に託したい……と言ったら君はどうするね」
アスラン 「……どういうことですか。また私にザフトに戻れと」
ギルバート 「うーん、そういうことではないな。ただ言葉の通りだよ。君に託したい」
アスラン 「え……」
ギルバート 「まあ、手続上の立場ではそういうことになるのかも知れないが。今度のことに対する私の思いは、先ほど私のラクス・クラインが言っていた通りだ。だが相手、様々な人間、組織、そんなものの思惑が複雑に絡み合う中では、願う通りに事を運ぶのも容易ではない。だから、思いを同じくする人には共に立って貰いたいのだ」
アスラン 「……」
ギルバート 「できることなら戦争は避けたい。だが、だからといって銃もとらずに一方的に滅ぼされるわけにもいかない。そんな時のために君にも力のある存在でいて欲しいのだよ、私は」
アスラン 「議長」
ギルバート 「先の戦争を体験し、父上のことで悩み苦しんだ君なら、どんな状況になっても道を誤ることはないだろう。我らが誤った道を行こうとしたら、君もそれを正してくれ。だが、そうするにも力が必要だろう、残念ながら」
アスラン 「……」
ギルバート 「急な話だから、すぐに心を決めてくれとは言わんよ」
アスラン 「……」
ギルバート 「だが、君にできること、君が望むこと……それは君自身が一番よく知っているはずだ」

▼議長はアスランに向かって言いました。
「我らが誤った道を行こうとしたら、君もそれを正してくれ」と。
 議長にも己の選んだ道が正しいのか確信はないのでしょう。だから、もし誤っていたと分かった時は、アスランに自分のことを討って欲しい。そう願っての言葉でしょう。指導者──というよりも人間としての誠実さを感じさせる台詞です。
 そして、実際に議長がこの先変質し(または本性を現し)、陰惨な殺戮者と化した場合、この「正してくれ」はラストボスとしての議長とアスランの戦いに向けた伏線なのだと思います。
 他方、議長が善良で誠実な指導者のまま敵対者に殺された場合には、「力」を託されながら彼を守りきれなかったアスランにとって、議長を殺した相手に対する敵討ちの伏線であり、やはりラストボス(議長の敵対者)との決戦に向けた伏線となるでしょう。

▼物語はアスラン(とカガリ)視点で既に十話を費やしています。三、四話ならともかく、アスランが脇役ならばこの扱いはバランスを失しているでしょう。
 また、彼の機体であるセイバーの扱いも、今回存在の意義まで議長の言葉で語られたりして、満を持しての登場といえます。
 ですから、OPに惑わされず、物語だけを見るなら『DESTINY』の主人公をアスランと判断しても違和感が無いと思います。
 それにしてもOPがフェイクだなんて、何とも形容に困ってしまうアニメですね(笑…って、そろそろ冗談には聞こえなくなりそうなのですが/汗)。

▼それにしても、今回の議長とアスランの会話は『SEED』34話におけるキラとラクスのそれにとてもよく似た雰囲気ですね。
 キラ達はこれから奪取しようとするフリーダムを前にしてこんな言葉を交わしていました。

キラ 「これを、何故僕に?」
ラクス 「いまのあなたには必要な力と思いましたので」
キラ 「……」
ラクス 「想いだけでも、力だけでもダメなのです。だから……! キラの願いや行きたいと望む場所にこれは不要ですか?」
(PHASE-34 まなざしの先に)

 この後、キラは軍や国ではなく個人としての立場で先の大戦に関わりました。
 議長もどうやらアスランに対して似たような立場で(つまりザフトの利害とは無関係の立場で)この戦争に関わって欲しいと考えているようです。
 もしかすると、スタッフの人達は意識的に前作の展開を繰り返しているのかも知れませんね。

▼現在、中立国オーブは大西洋連邦に屈しそうです。
 前回の戦争ではブルーコスモスのみが反コーディネイターのスローガンを掲げていました。
 ところが今回の戦争は違います。
 開戦早々に大西洋連邦はプラントに向け無数の核ミサイルを撃ち込みました。
 これは国家としてコーディネイターを滅ぼそうとする意図の表れでしょう。
 もし大西洋連邦の傘下に入るならば、オーブも虐殺者の列に加わる。
 そしてそのオーブのトップがカガリ。
 カガリ個人の意思としてはそのような道は選びたくないでしょう。
 しかし、大西洋連邦に叛旗を翻せば、前作のように攻撃され、オーブが滅茶苦茶にされてしまいます。
 求める理想と現実の乖離。
 オーブを再び戦禍に晒すまいとカガリが考えているなら、オーブは大西洋連邦と結ぶ方向へ進むでしょう。
 しかし、それはカガリの求める理想とは違うはずです。
 どうすれば良いのでしょう。
 ……
 ……
 もしかすると、カガリがオーブから切り離される展開があるかも知れませんね。
 前作『SEED』において、ラクスは「目指す未来の違い」から祖国プラントと袂を分かち、エターナルで同志達と共に脱出しました。
 前述した通り、アスランは前作のキラとよく似たポジションにいます。あたかも前作をなぞるかのように……
 キラの対となる相手はラクスでした。
 そしてアスランの対はカガリ。
 今作が前作を状況を意識的に模倣しているとするならば、カガリにも前作のラクスと似たようなイベントが用意されているのではないか。
 実際、今のカガリの状況は前作『SEED』でラクスの置かれた立場とそっくりです。

 前作のプラント→パトリック・ザラ率いる主戦派に席巻され、世論もナチュラル憎しの声が強い。
 今作のオーブ→ウナトら親大西洋連邦派の勢力が強い。すなわち対コーディネイター主戦論に傾いている。

 前作のラクスは国家に対する反逆罪に問われ、プラント脱出を余儀なくされました。
 同様に今作のカガリもオーブを脱出せざるを得ない状況に追い込まれるのではないでしょうか。
 ウナト・エマ・セイランという政敵も用意されています。
 他方、コーディネイター殲滅を標榜する大西洋連邦に組することに不安を覚えるコーディネイターのオーブ国民も多いでしょう。
 この先、両勢力によってオーブが政治的混乱に陥ることは目に見えています。
 その結果、オーブでクーデタが勃発し、カガリやその賛同者が国を脱出、あるいは追放されるようなイベントが用意されていると予想しても、それほど不自然ではないかと思います(つまりウナト一派の勝利)。
 前作でラクスを導いたバルトフェルドはオーブに健在ですし、マリューもいますし、オープニングではアークエンジェルが登場しています。つまり伏線は十分存在します。オープニングに出ているキラのフリーダムも関係してくるかも知れませんね。
 そして何より、行動の自由を得ることで主人公達と合流することもでき、カガリの出番が増えます(これが一番大事です/笑)。

[16-12-22]