「我らもカガリ様と」

アマギ 「仇を討つためとか、ただ戦いたいとか、そのような思いで我らはここに来たのではありません……我らはオーブの理念を信奉したからこそ軍に身を置いた、オーブの軍人です。ならば、その“真実のオーブ”のためにこそ戦いたい!」
カガリ 「……!」
アマギ 「難しいことは承知しております。だからこそ我らもカガリ様と…この艦と共にと!」
カガリ 「アマギ……」

▼インパルスの猛攻に次々と散っていくオーブの兵士達。
 彼らは何のために戦うのか。
 「戦を止めよ」との自分の言葉──否、“オーブの法と理念”は彼らの心には届かないのか。
 父ウズミとその同志達が命を賭けて守ろうとした“オーブの理念”は、所詮空虚な理想に過ぎないのか。
 ──先週までのカガリの嘆きと苦悩を言葉にするならば、以上のような感じになるでしょうか。
 いくら呼びかけても想いは通じず、自分達は哀れな道化にすぎないのではないか。
 そう思い始めていた矢先に現れた賛同者達。彼らは“真実のオーブ”のために戦うという。
 アマギのこの言葉を聞いた時のカガリの喜びはいかほどのものだったでしょうね。
 喪いかけていた自信と希望が彼女の裡で蘇っていく様が、この場面のカガリの表情に顕れているように思いました。
 どうやら、前作の彼女──砂漠で「俺達の勝利の女神だ」と呼ばれていた頃のカガリが復活する兆しが見えてきたようです。

 そして──
 この場面での「仇を討つためとか、ただ戦いたいとか、そのような思いで我らはここに来たのではありません」というアマギの台詞は、シンに対するアンチテーゼともなっているように思いました。
 つまり、シンは「オーブに家族を殺された」という復讐心(逆恨み)を己が行動の原動力(彼の裡のSEEDが発動する要因)にしています。
 これに対し、アマギは復讐心ではなく「理想」のために自分達は戦うと誓っているのですから。

 そして、彼らの求める「理想」は、そんなに大袈裟なものではありません。この場面でキラは言いました。

キラ 「僕達はたぶんみんな、きっとプラントも地球も…幸せに暮らせる世界が欲しいだけなんです」

 「幸せに暮らせる世界」。
 それが彼らの求める「理想」なのです。

タリア 「毎度毎度、後味の悪い戦闘だわ。敗退したわけでもないのに」

 勝ち続けながら、意気は上がらず、精神的にも戦力的にもひたすら疲弊していくばかりに見えるミネルバ。
 他方、今はまだささやかな“力”にすぎないけれど、理想を求めて士気は衰えず、次第に同志も増えつつあるアークエンジェル。
 対照的な二隻の戦艦ですが、この先、どのような運命が彼らを待っているのでしょう。

[17-05-14]