これまでに氏名が判明した登場人物。
第五話→立華かなで
第六話→直井文人
第七話→音無結弦

※第三話→椎名枝里(かなでのPC内のリストより)、第九話→竹山クライスト(反省文より)……を含めてもよいかも知れません(笑)。

そして今回、新たにファーストネームとファミリーネームが確定した登場人物。
第十話→日向ユイ(予定)

ああ、でも、次にかれらが出逢うのは、今とは違う名前と違う顔で……でした。
そう考えると、「この学園」はまさに一期一会の世界なんだな、と。
ひとたび別れたならば、再び会える機会がやって来るかどうかは分からない。
そして、たとえ二人が出逢ったとしても、思い出はすべて忘却の彼方で。
次の人生でふたりが巡り会い、お互いの気持ちを育てていけるとしたならば、それは奇蹟であって。
だからこそ、ふたりが一緒にいることのできた時間は、短くても宝石のようにとても貴重な刻となるわけで。

この先ずっと、すべてが終わるその時まで、ちくちくした胸の痛みと喪失感を抱えたまま、日向は日々を過ごすんだろうな、と……そう思ったのですが、予告を見る限り、それどころじゃない事態が迫っているみたいですね。
ちょっとは余韻に浸りたかったな?、と。


「その方が天使らしい」

音無「あと、羽生えねえかな」
かなで「羽? 生やしてどうするの?」
音無「いや、見た目かっちょいいじゃん」
かなで「かっちょいいのがいいの?」
音無「いや、その方が天使らしいかなーって」
かなで「……考えておく」

音無の色に染められていくかなでの図……ですねー。
それはともかく、音無の発言に対してかなでが即座にツッコミを入れる??というのがこの二人の会話の基本、という印象があります。
例えば、第一話で「あたしは天使なんかじゃないわ」と言い返した時のように。
あるいは、第六話で「おかしなことを言うのね。助けて欲しいのはこっちじゃない?」と言い返した時のように。
はたまた、第九話で「それはこっちの台詞じゃない?」と言い返した時のように。
ですが、上に引用した会話では少し様子が違います。
「その方が天使らしい」という音無の言葉に対して、前話までのかなでなら「あたしは天使じゃないのに」と言い返していたんじゃないかな、という印象があるのですが、この会話ではスルーしています。
「分身」の意識を包摂したことによって、もしかすると「自分は天使である」あるいは「天使だった」という記憶が蘇りつつあるのかも知れません。

バイブルに描かれている「天使」は実のところ、かなでよりも「冷酷なかなで」と音無が評した彼女の「分身」のほうに近い印象があります。

四人の天使は、人間の三分の一を殺すために解き放たれた。この天使たちは、その年、その月、その時間のために用意されていたのである。(ヨハネの黙示録9.15)
わたしは大きな声が神殿から出て、七人の天使にこう言うのを聞いた。「行って、七つの鉢に盛られた神の怒りを地上に注ぎなさい。」(ヨハネの黙示録16.1)

バイブルに登場する天使は、神の言葉に何の躊躇もなく従い、人類を死滅させることさえ厭わない存在です。
神の命令をひたすら忠実に遵守する。それがバイブルに描かれている天使の行動です。
人間的な甘さとは無縁の、とても恐ろしい存在です。
かなで……特に第六話以降で描かれているかなでのようにぽわぽわした存在ではありえません。

直井「生徒会長代理として命じる。おとなしく戻れ」
音無「立華、この惨状だ。それが正しくないってことは分かるよな?」
かなで「(頷く)……ハンドソニック」(EPISODE.06 Family Affair)

この一連の会話で明らかになったように、それが正しくないと思うなら、かなではルールを破ることにも吝かではありません。
そもそも彼女の目的はルールを守らせることにあるのではなく、ルールを守ることによって得られる(であろう)「卒業」に至る「満足感」を皆に味わってもらいたいからでした。
つまり、彼女の根底には不本意な人生を歩み「この世界」にやって来ざるを得なかった少年少女への慈しみがあるのです。
ですが、かなでの「分身」たちは違います。
ひたすら攻撃的で、かつ無慈悲にルールを押しつけてきました。
その目的はゆりの推測によれば、

日向「こんなことまでして何が目的なんだ」
ゆり「最終的には完全なる服従でしょ。それが彼女の使命だもの」
日向「おとなしく消えろってことかよ……」(EPISODE.08 Dancer in the Dark)

ということです。
神に対する「完全なる服従」を要求する。これはバイブルの天使たちに見られる属性に近いように思えます。
すなわち、「分身」たちの行動こそが本来の「天使」のあり方だとするならば、そして、それに対するかなでの本質が「この世界」にやって来た少年少女への慈しみにあるとするならば、第一話の冒頭でかなでが自分は「天使なんかじゃない」と言い返したのも諾なるかな、ということです。
ただひたすら神の命令に従うことだけを善しとする「天使」であることをやめた「元天使」。
それがかなでの正体なのかも知れません。
そして、かなで自身も「この世界」の「神」の無慈悲さに抗っている存在なのかも知れません。


[22-06-07]
文責・てんま

「がんばって介護してくれたあたしのお母さん」

ユイ「ねえ、そん時はさ…… あたしをいつも一人でさ、がんばって介護してくれたあたしのお母さん。楽にしてあげてね」
日向「任せろ」
ユイ「よかった……」

最近は涙もろくなってイカンですよ。
この場面で涙腺決壊ですよ。
この後のユイママが涙ぐむ場面でも堪えきれずにもらい泣きですよ。
どうやら、ファミリーへの優しくて強い想いが感じられる場面に弱いみたいです、自分。


「また会えたら」

[c280]「じゃあ、また会えたら会いましょう」

公式サイトの予告動画では、ゆりの表情は「すっきりした!」と言いたげに微笑んでいるように見えます。
どうして彼女は晴れ晴れとした笑顔を見せているのでしょう。
いくつか予想をしてみました。
(1) かなでと和解ができた。
「戦線」最初の同志である日向がかなでの名前を知らなかったのに対して、ゆりは知っていました(第五話)。
この世界にやって来てからかなでと知り合ったのか、前の世界からの知り合いだったのかは不明ですが、ともあれ、ゆりが日向と出逢う以前に、彼女とかなでとの間に何らかの交流があったことはほぼ確実だと思うのです。
以前にも書いたことですが、

音無「天使はこの世界のルールには従順、ということか」
ゆり「不器用ってことよ」(EPISODE.01 Departure)

第一話における音無とのやり取りでゆりが口にした「不器用ってことよ」という台詞について、これは音無がかなでを評していった「不器用」と同じような感情がこめられているのではないかな、と。つまり、

音無「どんだけ不器用なんだよ、お前」
かなで「知ってる」
音無「自覚はあるんだな」
かなで「うん」(EPISODE.09 In Your Memory)

この場面で音無の言った「不器用」は、決してかなでのことを貶んでいるわけではなく、愛情や共感や同情などの親愛の情がこもった表現ですよね。
そして、ゆりの言う「不器用」という台詞も音無と同じ目線で口にしているのかも知れないな、と思います。
また、ゆりのかなでに対する信頼感は実はかなり強いように見受けられます。

音無「実力行使は?」
ゆり「目には目をっ。こっちが仕掛けた時にはね」(EPISODE.01 Departure)

この台詞は、かなでのほうからは絶対に攻撃してこない、つまりかなでは専守防衛に徹していると確信していない限り出てこない台詞ですし、

ゆり「あぶり出しに成功ね。こっちは武器も無し。あるのはバットにグローブ。果たしてどんな平和的解決を求めるのかしら。見物だわ」(EPISODE.04 Day Game)

この台詞だって、かなでが「平和的解決」に徹するであろうと信頼しているからこそ口にできる台詞でしょう。そして、何より、

ゆり「ねえ、音無くん。天使を連れてきて。この酷い戦いを終わらせるには、天使の存在が必要なの」(EPISODE.06 Family Affair)

この台詞などは、「この世界に生きる者たち全てに対して、すなわち、敵対関係にある者に対してすら、かなでは深い愛情を抱いている」と、ゆりが理解していない限り、出てこない台詞だと思います。
つまり、おそらくゆり自身はかなで個人のことは認めているのではないでしょうか。
「彼女が『天使』でさえなければね……」という感じで、もしかすると、ゆりは本当はずっとかなでと仲良くしたかったのかも知れませんね。
それに第七話では、かなでを前にして「戦線」の皆が怯える中、

音無「いいじゃないか、混ぜてやろうぜ」
   (中略)
日向「どうすんだよ、ゆりっぺ」
ゆり「もう生徒会長でもないし、いいんじゃない?」(EPISODE.07 Alive)

と言っていたくらいですし。
もしそうであるなら、この場合、彼女がかなでに対して行ってきた数々の行為もいわゆるツンデレの現われに見えないこともないかな、と。
……などと書いたら、「わたしは好きな子に意地悪をしたがる小学生男子かぁっっ」とゆりっぺさんにどやされてしまいそうな気もしますが(笑)。
(2) 「戦線」の仲間たちを自分の手で「影」から守れるかもしれないという目処がついた。
ゆりの心残りのひとつ、そして神を恨むに至った理由のひとつが、大切な者たちを守れなかったことだと思います。
そして今、ゆりにとって大切な者とは「戦線」の仲間たちでしょう。
かれらを守ること、イコール、ゆりにとっての「最高に気持ちがいい」ことなのではないでしょうか。
だから、晴れ晴れとした笑顔になったのではないか、と。

[c274]「俺は待っている!」
[c280]「じゃあ、また会えたら会いましょう」
[c281]「ゆりっぺ!」

このように台詞を並べると、ゆりが自分を犠牲にして「戦線」の仲間を守ろうとしているシーンにも見えますよね。
ゆりが何か逆転のための秘策を実行するべくどこかに行こうとしている背中に向かって音無が(ゆりが無事に戻ってくるのを)「俺は待っている!」と叫び、
   ↓
その言葉に、ゆりが振り返って「また会えたら会いましょう」と再会を誓い、
   ↓
日向が「行くな」という気持ちをこめて「ゆりっぺ!」と叫ぶ。
……という流れになるのかなあ。
「また会えたら」というのはこの場合、「生まれ変わった先でもまた会えたら」という意味にも、「影」の問題が解決した後で「まだこの世界で生き残っていたら」という意味にもとることができるように思います。
(3) (2)とは逆に、もはやどうにも挽回できそうもない状況に陥ってしまい、「せめて最後は笑顔で別れましょ」という意味の表情。
(4) 単に戦う前の「グッドラック」という意味合いにすぎない。
(5) かなでと協力し、「影」に対してカウンター・アタックを仕掛ける直前の場面。

……他にはどんな展開がありえるかなー……と色々想像するのも楽しみのひとつですよね、この作品の場合。


[22-06-09]
文責・てんま