「肉体はただの器にしかすぎない」

リボンズ「ボクの意識はヴェーダと直接繋がっている。肉体はただの器にしかすぎない」
リジェネ「そんなことがっ!」
リボンズ「キミにできないことがボクにはできる。言ったはずだよ、ボクはキミたちの上位種だと」

▼要するにアレですか。
リボンズの場合、たとえ肉体を失ったとしても、

アムロ「まだだ! たかがメインカメラをやられただけだ!」
(『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙そら編』)

ということになるわけですね。
さすがアムロさんボイス。やるなぁ。
▼……という感想はさておき。
リボンズは自分がヴェーダと一体化していると告げました。
ですが、そもそも、現在「リボンズの肉体」を操っている存在が「本来のリボンズの意識」であるという証拠はどこにあるのでしょう。
もしかすると、「本来のリボンズの意識」は既に消滅していて、現時点で「リボンズの肉体」を操っているのはヴェーダである、という可能性もあるのではないでしょうか。
ただひたすら計画の遂行のみを優先し、リボンズから人間らしい感情が欠落しているように見えるのは、彼の本質がヴェーダという機械知性であるため、と解することもできそうな気がします。


「勘違いしてもらっては困る」

マネキン「久しぶりだな、九条」
スメラギ「カティ・マネキン。どうしてあなたが」
マネキン「勘違いしてもらっては困る。我々はアロウズを断罪するため、お前達を利用したまでのこと。この戦いを終えた後、改めてお前達の罪を問わせてもらう」
スメラギ「カティ……」

▼マネキン大佐の台詞、「馴れ合いはせん!」のほうが良かったのに……………と、ちょっとだけ残念に思いつつ(笑)、でもやっぱりこれがあるべき「共闘」の形だよねー、と思ってみたりもするのです。
ずるずるとなし崩し的に仲間になるのではなく、ちゃんと線引きをした上での協力関係。緊張関係を保ったまま、でもこの瞬間だけは仲間だよ、という連帯感。
うん、燃えます!


「来るぞ、攻撃が来る! 禍々しい光が!」

刹那「全部隊に告ぐ! 即座に回避運動をとれ! 来るぞ、攻撃が来る! 禍々しい光が!」

▼せっちゃんがアムロさんに並んだ瞬間です。

アムロ「ダメだ、前へ進んじゃダメだ! 光と……人の渦が……と、溶けてゆく……! あぁ……あれは、憎しみの光だ」
(『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙そら編』)

アムロ云々は冗談として……実際のところ、刹那のこの台詞は彼に何が起きたと解釈すべきなのでしょうね。
ビーム攻撃の速度からいって、発射された様子を見てから「回避しろ」と言い出すとはとても思えませんから、
1、未来予知。
2、リボンズの意識を読んだ。
おそらく1と2のどちらかだとは思いますが……。


「幸せになれるの?」

ルイス「お前達は、世界を乱す悪だ! お前達さえいなくなればっ!」
沙慈「幸せになれるの?」
ルイス「沙慈!?」
沙慈「戦いで勝ち取る未来なんて、本当の未来じゃないよ! ボク達はわかり合うことで、未来を築くんだ!」

▼せっちゃんと沙慈って、良いコンビですよね。
口べたな刹那に代わって、彼の想いを沙慈が完璧に代弁してくれている。
そのようなことを強く感じさせる場面でした。
▼沙慈は言いました。
「わかり合うことで、未来を築く」と。
これはマリナのこれまでの言動とも一致するものです。
彼女のことを側近くでずっと見てきたシーリンは以前、こんなことを言っています。

シーリン「わかり合う気持ち……マリナはずっとそれを求めて……その先にあるものを信じて……」
(#21「革新の扉」)

第1期の頃から、どのような運命に見舞われようとも、マリナのその想いに微塵もぶれはありませんでした。
彼女は戦うことしか知らなかった刹那を、その言葉で今のような境地に導いていきました。
いわば彼の導師……………と表現すると、何だか宗教っぽくて嫌なのでやめよっと(笑)。
「先生」ならいいかな。
「マリナ先生」。
うん、しっくりくるかも。今の彼女は保育士さんっぽいことをしていますしね。
というのはさておき。

マリナこそが「OO」という物語の中でとても大切な部分を担っているヒロインなのだろうな、と思います。
▼そして、もう一人の重要なヒロインであるルイス。
21話で彼女は両親の仇を討ちました。
仇を討って…………そして泣きました。
だけど、それは喜びの涙ではありませんでした。

ルイス「やったよ。パパ、ママ、仇をとったよ。ガンダムを斃したよ! アハハ、アハハハ、ウフフ、フフフフフ。ママ、パパ、どこ? あたし、やったよ。やったんだから………だから………褒めてよ…… よくやったって言って…… う、うう、うわぁぁぁぁっ」
(#21「革新の扉」)

仇をとって…………だけど、亡くなった人達は帰ってこない。その虚しさ、後味の悪さ。そういった感情を表しているのだと思います。この時のルイスの悲痛な慟哭は。
だからこそ。
今回の沙慈の言葉は彼女の胸に深く届くはずです。
「戦いで」「未来」を「勝ち取って」、それで「本当」に「幸せになれるの?」と問いかける沙慈の言葉が――彼の想いが。
「戦いで勝ち取」った結果の虚しさを肌で知っているルイスだからこそ。

……「OO」の登場人物の言動には、必ずといって良いくらい、以前のお話の中で伏線が張られているように感じます。
(以前のあれは伏線だったのか)と気づくたびに、(スタッフの人達すごいな)といつも思います。
今回だってそうです。
21話の復讐戦とその後の虚脱感を経験していなければ、リボンズによる洗脳状態の今のルイスなら「甘ちゃんが、きれい事を!」と沙慈の言葉を一蹴する可能性もありました。
ですが、「沙慈!?」と言った彼女の表情を見る限り、どうやらそうはならない雰囲気です。
とするならば、問題はリボンズによる再洗脳と精神支配、そして手負いのアンドレイの行動かな。
次回、ルイスが沙慈達のもとに赴こうとした場合、セルゲイさんの時みたいに「裏切るのか、ハレヴィ准尉!」みたいな感じで逆上しないとも限りません。
ラストボスであるリボンズが非道であるのは仕方ないとして……どうか次回はアンドレイさんがおとなしくしていてくれますように。

[21-03-15]

「トランザムは使えまい」

ラッセ「こんだけ近けりゃ、トランザムは使えまい!」

▼Oガンダム。
それはRX78の顔と、ストライクガンダムのボディをもった機体………………わわ、微妙かも(笑)。
1期最終話「刹那」のラストシーンで一応登場していましたが、あの時のOガンダムはカメラ・アイなど一部を除いてメタルグレー一色でした。
まさか、こんなカラーリングだったとは……。
ここまでストライクに似たボディだと、実はOガンダムはフェイズシフト(PS)装甲を採用していて、最終回のあの時にグレーだったのはフェイズシフトダウン中だったのでは……などなど色々と妄想してしまいます(笑)。
それならいっそのこと、ストライク同様に絶対無敵の超防御技術、セーフティシャッターをコクピットに備えていたら楽しいかも、と思ったりもするのです。
…………って、備えていたりして(笑)。
や、これはもしかすると、他のレギュラーキャラ達よりも一足早く、ラッセさんに生存フラグが立ちましたか?


「守ってみせる、今度こそ!」

ミレイナ「ブリッジへ通じる隔壁が破られたですっ!」
フェルト「スメラギさん!」
スメラギ「フェルト、ミレイナ、戦術通りに対応して」
フェルト「わかりました」
ミレイナ「はいですっ」
スメラギ「守ってみせる、今度こそ!」

▼「これはもう詰んでしまったかな」
状況はそうとしか思えないくらい絶望的。
だけど、フェルトもミレイナもその瞳の輝きを失っていません。
対人殺戮兵器オートマトンの侵入を知りつつ、フェルトもミレイナも毅然とした声でスメラギさんの指示に応じていました。
それは彼女達の戦術予報士を信じているから。
スメラギ・李・ノリエガという天才を信じているから………ということなのでしょう。
とはいえ、彼女は孤高の天才ではありません。万能の天才ではありません。
幾度も挫折を経験しています。
OOの物語の中でも、彼女はずっと悔いていました。仲間の命を守りきれなかったことを。
酒精に浸り、自暴自棄にもなりました。
だけど、彼女は再び立ち上がった。
世界を変えるため。
けじめをつけるため。
そして、大切な仲間達を守るため。

スメラギ「ロックオン、クリス、リヒティ、モレノさん……もう一度、わたしにできるかしら。世界と向き合うことが。そして、大切な人を守ることが」
(#04「戦う理由」)

そんな彼女の蹉跌と苦悩と、そして再起を知っているからこそ、仲間達は彼女に全幅の信頼を寄せるのでしょう。
だからこそ、胸に響きました。
「守ってみせる、今度こそ」という彼女の言葉が。

普通に考えれば絶体絶命の危地にあるトレミーですが、スメラギさんの不撓不屈の意思が宿った表情を見ていると、何とか全員無事に生き延びてくれるんじゃないかな…………そう期待してしまいます。

[21-03-16]

「ハレヴィ准尉の援護に向かう」

リヴァイヴ「ハレヴィ准尉の援護に向かう」
ヒリング「了解」

▼イノベイター達は「残りのガンダムの掃討」ではなく、「ルイスの援護」を口にしました。
つまり、かれらにとってガンダムの撃破はもちろん重要でしょうが、それよりも優先すべき事項として「ルイスの援護」があるということです。
人間のことを下等種として見下しているイノベイターのことです。「ルイスの援護」はかれらの自発的な意思ではないように思えます。
もしかするとリボンズにあらかじめ言い含められていたのはないでしょうか。
「きみたちはルイス・ハレヴィを護らないといけないよ」と。
ところで、リボンズは人間のことをただの駒、道具と見なしています。
用済みになった者は弊履のごとく捨て去っていることからも、それは明らかです。

リボンズ「アレハンドロ・コーナー、あなたはいい道化でしたよ。(中略)統一された世界の行く末はボクに任せてもらうよ」
(第1期#25「刹那」)
リボンズ(刹那に対して)キミの役目は終わったから、そろそろ返して欲しいと思ってね」
(#14「歌が聴こえる」)
リボンズ(ネイナに対して)そういうキミの役目も終わったよ。勝手をする者には罰を与えないと。フフフ、キミを裁く者が現れるよ」
(#21「革新の扉」)

そのリボンズがルイスを護るように申し渡していたとするなら。
それはルイスに依然として(彼にとっての)利用価値があるからに他なりません。
かつてリボンズは言いました。

リボンズ「人類初のイノベイターとなって、この世界を導いて欲しい。いいね、ルイス・ハレヴィ」
(#20「アニュー・リターン」)

最強のモビル・アーマーであるレグナントをルイスに与え、さらにイノベイター達を使って彼女を護らせる。
ここまでするというのはすなわち、リボンズが本気で、ルイスを人類の導き手に選んだ、ということではないかと思います。
おそらくリボンズの目論見は蹉跌すると思いますが、彼の構想したルイスの君臨する地球世界の未来も少しだけ見てみたい気もします。彼女が1期のころの性格を取り戻したなら、いろいろな意味で大変です(笑)。

[21-03-18]

「この艦こそ人類の希望」

リボンズ「コロニー型外宇宙航行母艦ソレスタル・ビーイング。イオリアは2世紀以上も前に予見していた。未知なる種との遭遇を。GNドライブ、ヴェーダ、イノベイター……そして……この艦こそ人類の希望。人類を滅亡から救う……まさに箱船だよ」

▼「来るべき対話」と言いつつ強力な武装艦を用意する。「戦う気満々じゃん!」とツッコミを入れまくりたい方もおいででしょうけれど(笑)。
まずは考えてみましょう、二つの異なった文明が出逢う時に起きるかも知れないことについて。
▼二つの異なった文明が出逢った時、何が起こるか。
過去の歴史を鳥瞰するだけで、おのずと答えは見えてきます。
例えば、キリスト教会暦の1500年代、中南米のインディオは馬という動物を知りませんでした。鉄の使用も文字の使用も知りませんでした。
アステカの兵士の武装は木製の盾と剣(刃は黒曜石)でした。
そのような文明と出逢ったとき、スペインやポルトガルといった先進地域の諸国は何をしたか。
……アステカ文明、インカ文明、マヤ文明――これらの地域にあった非キリスト教文明の破壊、略奪、虐殺を彼らは行いました。
いわゆる「大航海時代」と呼ばれる歴史時代の出来事です。
異なったレベルの文明が出逢った時に起こった悲劇といえるでしょう。
ちなみに、その災禍は日本にも及ぶところでした。
天正13年(キリスト教会暦1585)、イエズス会士コエリヨ(準管区長)は日本占領のため、艦隊の派遣をマニラの総督府に要請し「当地(日本)のキリスト教徒の領主の援助を得て、日本の海岸全体を支配し、服従しようとしない敵に脅威を与えることができる」との意見書を送りました。
そしてその2年後には、火砲による重武装を施したフスタ船で関白・豊臣秀吉の前に現れ、彼を恫喝しています。
この当時、九州では無数の神社仏閣がキリシタン大名の手で焼かれ、十字架の名のもとに多数の僧侶が殺され、日本人が奴隷として売買されていました。
堪りかねた秀吉はこの年(天正15年)の6月19日(キリスト教会暦では7月24日)、外国人のバテレン追放令を公布します。
すると、コエリヨはキリシタン大名の有馬晴信と小西行長に挙兵を求め、自ら火薬や硝石の買付けを始めました。
もちろん両大名はコエリヨの要請を断りますが、コエリヨはそれでも諦めず、マニラ総督府に派兵を嘆願しています(断わられましたが)。
▼日本が軍事的征服を免れたのは、別に僥倖だったからというわけではなく、その軍事力が当時のヨーロッパ諸国と拮抗していたからです。
当時の最先端兵器だった火縄銃の国産に成功し、永禄5年(キリスト教会暦1562)の頃は1万挺を、元和元年(キリスト教会暦1616)には6万挺を超す火縄銃が存在したと考えられています。
「国民は非常に勇敢で、しかも絶えず軍事訓練を積んでいる」ため、日本の軍事的征服は不可能である、とイエズス会の東インド巡察使ヴァリニアーノがスペインのマニラ総督に報告しているくらいです。
▼つまり、異なる文明が遭遇した時、一方が他方を遥かに凌駕する技術力を有していた場合、悲劇は起き、拮抗していた場合、悲劇は未然に防ぐことができる、ということです。
同じ時期にヨーロッパ文明と出逢った日本と中南米諸文明ですが、その後まるで異なった歴史を歩んだことを考えれば、イオリアの結論もむべなるかな、と思えます。
すなわち、イオリアは単なる夢想や冗談としてではなく、異星文明との邂逅を――そして、その際何が起こりうるかについて、本気で考えていたのでしょう。
だから、ソレスタル・ビーイングに強力な武装を備え付けた、ということだと思います。
▼ちなみにリアルワールドでは、現在、無人探索機ボイジャー1号・2号が外宇宙を探索しています。
当初打ち上げられる探索機はマリナー(Mariner)11号・12号の予定でしたが、それがボイジャー計画に引き継がれたとのことです。
マリナーという名の探索機が外宇宙に出るはずだった……というのは、OOの未来を考える上で何とも象徴的です……と言ってみたりして。
……や、自分で言っておいて何ですが、名前が似ているからといって、何でもこじつけるのはよくないですね。
それはさておき。
ボイジャーに搭載されたゴールデンレコード
これには「私達はここからこの探索機を送り出しましたよー。この恒星系の3番目の惑星ですよー」みたいな図が刻んであって、地球のポジションを推測する可能性のある内容となっています。
むー、危険きけん。地球が悪の宇宙人に狙われてしまいます。
と言っても、そこから地球の位置を実際に探り当てる可能性は、宝籤の1等賞に当選するよりも低いでしょうけれど(笑)。
▼もっとも、リボンズの「人類を滅亡から救う……まさに箱船」という台詞からは、地球は滅び、そこから逃げ延びた一部人類によって人類文明を復興させる、という可能性も連想してしまいます。
すなわち、現行人類の大多数は外宇宙からの侵攻によって地球とともに滅びるかも知れない、ということです。
そこまで確信していたのだとするなら、イオリアはもしかすると外宇宙文明の存在を「予見」していたのではなく、「知って」いたのかも知れないですね。
つまり、イオリア計画に登場する各種テクノロジー自体が外宇宙文明由来のオーバーテクノロジーではないか、ということです。
言うならば、ペリー・ローダンみたいなものですね(笑)。
そもそも、2世紀前ということは、現代日本で言えば江戸時代です。
例えば、江戸時代の市井の学者の研究が、現代の最先端の研究開発を遥かに凌駕していた――というのは、どう考えても不自然です。
それと同じことがイオリア由来のテクノロジーにも言えると思います。

▼それはそれとして、ここで外宇宙航行船を出してきたということは、ラストは外宇宙へ行くのでしょうかね〜。
ソレスタル・ビーイングの生き残りやマネキン大佐のような反乱軍、さらにはカタロンの人々を乗せて。
かれらは戦後の地球世界ではとても生きていくのが辛いと思うんです。その救済手段として。
そしてOO第三部は、ガンダム初の外宇宙物語を希望してみたり(笑)。
▼ところで、イノベイターは本来はこのソレスタル・ビーイングのクルーとなる予定で産み出された存在なのかも知れないですね。
それがいつの間にか「人類の上位種」と自らを位置づけて、「私達が人類を導くのだ〜!」と考えるようになったのではないか、と。
だとするなら、彼らイノベイター達もリボンズに歪められた被害者なのかも知れません。

[21-03-21]
文責・てんま