「ソレスタル・ビーイングの本懐」

クリスティナ 「わたしたちのしたことで、人革連の軍備が増強されていくんじゃ……」
ティエリア 「かれらがそうするというのなら、我々は武力介入を続けていくだけです」
フェルト 「戦争の根絶」
ティエリア 「そう、それこそが、ソレスタル・ビーイングの本懐」

▼ソレスタル・ビーイングのスローガン「武力による戦争の根絶」を作中で耳にするたびに、「逆襲のシャア」の次の台詞が蘇ります。

アムロ 「世直しのこと 知らないんだな。革命はいつもインテリが始めるが、夢みたいな目標を持ってやるから、いつも過激なことしかやらない。しかし、革命の後では気高い革命の心だって官僚主義と大衆に飲み込まれていくから、インテリはそれを嫌って世間からも政治からも身を退いて世捨て人になる。だったら……!」
(『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』)

 ガンダム・シリーズでは「世直し」について上記のように達観しています。
 そして、これは「戦争が無くなるわけないさ」という諦観にも通じます。「気高い」「心だって」「大衆に飲み込まれていく」=失われる、と言っているのですから。
 「OO」の直前のガンダム・シリーズでもそうでした。戦争は無くならないという結論でした。
 前シリーズ「SEED DESTINY」の主人公グループは、「OO」のソレスタル・ビーイングとよく似た志を抱いていました。
 ですが、テレビ本放送のラストシーンでは出撃するストライクフリーダムの姿が描かれており、これはすなわち、その時点で戦争がいまだ根絶されていない、ということを暗示していると思われます。物語は終わっても、それはひとつの戦いが終わったにすぎず、世界がハッピーエンドを迎えたわけではない。
 何が言いたいかと申しますと、つまり、「武力による戦争の根絶」というスローガンには「今更感」があるのです。
 直前のシリーズで正面から扱い、「それは失敗に終わる」との結論に至ったものです。
 ということは、今回は別の結論を採用するのでしょうか。
 「ガンダムという超兵器によって戦争は無くなりました。世界は平和になりました」というような感じの。
 ……む? このように表現してみて気づきました。これって、プラモデルの販促番組としては理想の展開かも知れないですね。


「『ソレスタル・ビーイングを世界警察に任命してはどうか』なんてことを言ってたよ」

大統領 「デビット、昼のニュースは見たか? コメンテーターが『ソレスタル・ビーイングを世界警察に任命してはどうか』なんてことを言ってたよ」
大統領補佐官 「妙案ではあります。国連と違って維持費がかかりません」
大統領 「フッ、人間の多くは脛に傷を持っている。国家もまた然り。かれらと手を組む者などいるはずがない」
外務次官 「大統領、タリビアが明日、声明を発表するとの報告が」
大統領 「ふぅむ」

▼想定外の状況に遭遇すると簡単にオタオタして何をしてよいか分からなくなり、些細なことでもすぐに幼児じみたヒステリーを起こして周囲に当たり散らす。
 我が国のエンターテイメント作品では、エリートや国家指導者はそんな感じの小物として描写されることが多いです。
 ですが、そもそも、過酷な競争を勝ち抜き、いくつもの修羅場をくぐってきたエリートや、何十万、何百万もの人々の信望を集めて国家指導者となったような人物が、(善人かどうか、欲深かどうかなど人間性の面は別として)アニメやコミックで描かれるような浅薄で無能な小物揃いというのは不自然ですよね。
 しかし「OO」におけるかれらの描写は違う。懐の深い、落ち着いた真っ当な大人として描かれています。淡々と仕事をこなす「出来る男」のイメージです。
 これは個人的にかなり好印象です。
 「敵」には重厚な存在であって欲しい、というのもありますが。

※ ちなみに、「国連と違って維持費がかかりません」という台詞ですが、平成19年現在における国連の維持費はその6分の1以上を日本が出しています。「出している」というか、「出さされて」います。ずいぶんと馬鹿にされた話です。日本には国連でほとんど発言権がないのにね。国連への加盟はあくまで外交政策の一環で、慈善事業ではないのですから。


「だからさ。休めるときに休んどけよ」

ロックオン 「それは一時的なものだ。武力介入を恐れて、先手を打っただけにすぎん」
アレルヤ 「ぼくたちがいなくなれば、かれらはすぐに活動を再開する。分かってますよ。紛争根絶はそんなに簡単に達成できるものじゃない」
ロックオン 「だからさ。休めるときに休んどけよ。すぐに忙しくなる」

▼ハロの人の「だからさ」という台詞回し。使い方が富野ガンダムのそれにとても近くて、思わず心が躍りました(笑)。
 OPのガンダムがぞろぞろと連なって飛ぶ場面はターンAの第二期OPのそれによく似てますし、「OO」は小躍りしそうになることが多いですね、富野ガンダムのファンとしては。


「なら、やるべきことはひとつです」

マリナ 「それを探すために議会は王政を復活させて、わたくしを担ぎ出したのでしょう? なら、やるべきことはひとつです」

▼薄笑いを浮かべ、自分以外のすべての他人を見下すような言動・態度をとるキャラは、たとえ作中の人物とはいえ、あまり得意ではないのです。
 逆に、一生懸命がんばる系のキャラは大好きなのです。
 たとえそれが空回りのがんばりに見えても、かれら自身は報われることが少なくても、好きなものは好きなのです。
 例を挙げるなら「SEED」のカガリがそうでした。
 今回のマリナさんはどうなのでしょう。
 とりあえず、清楚で健気な雰囲気のお姫様です。
 滅びつつある祖国のために立ち上がる姫君、どんな苦境を前にしても決して逃げることはない……彼女がそうだとするなら、ポイント高いです。
 もっとも、判断を下すにはまだ早いですし、情報も少なすぎますね。

[19-10-28]
文責・てんま