「ねえ、わたしたち、わかり合えてたよね」

アニュー「ライル……わたし、イノベイターで良かったと思ってる」
ライル「何でだよ」
アニュー「そうじゃなかったら、あなたに会えなかった。この世界のどこかですれ違ったままになってた」
ライル「……いいじゃねえか。それで、生きてられるんだから」
アニュー「あなたがいないと生きてる張りがないわ」
ライル「アニュー」

▼この会話に続くアニューの表情の変化がせつないです。
優しいまなざしをして。
そして泣き出しそうな顔になって。
でも、涙が出そうなのは視聴しているこちらも同じです。

アニュー「ねえ、わたしたち、わかり合えてたよね」
ライル「……! ああ……もちろんだとも」
アニュー「よかった」

▼爆発に巻き込ませまいとケルディムガンダムを突き飛ばすアニューのMS。
そして流れる「trust you」……。
ああ、言葉が見つからないや。
胸の中にある想いをうまく伝えられません。
――この場面があって、この場面を見ることができて、そして「OO」はずっと忘れることのできない物語になった。
…………あえて言葉にするなら、このような感じでしょうか。

▼USA第16代大統領だったエイブラハム・リンカーンの言葉に、
「こうして人間に生まれてきたのだから、やはり、何か生き甲斐が感じられるまで生きている義務はあると思う」
というものがあります。
今回のアニューの姿を見ていて、ふとこの言葉が思い浮かびました。
彼女は「生き甲斐」を見つけることはできたのだと思います。それがせめてもの救い、でしょうか。
でも、ラウルともっとずっと一緒に生きたかったんだろうな……。


「この世界を導いて欲しい。いいね、ルイス・ハレヴィ」

リボンズ「ボクはキミに期待している。このレグナントだってキミのために持ってきたんだ。……人類初のイノベイターとなって、この世界を導いて欲しい。いいね、ルイス・ハレヴィ」
ルイス「…………わかっているわ、アルマーク」
リボンズ「フ。いい子だ」

▼アーサー・C・クラークの著したSFの古典的名作に「幼年期の終り」という小説があります。
アシモフの「ファウンデーション」シリーズと同様に、おそらく「OO」のモチーフの一つとなっている作品です。
「幼年期の終り」第一部では、外宇宙文明のオーバーテクノロジーによって人類統一がなされつつある、その過渡期を描いているのですが、そこに登場する<オーバーロード>カレルレンと<国連事務総長>ストックホルムのような関係をリボンズはルイスとの間に予定しているのかな、と思いました。
すなわち、「幼年期の終り」においてストックホルムが統一地球世界におけるカレルレンの唯一の代弁者であるのと同じように、ルイスのことを地球世界の全てを司る存在としてのリボンズの代弁者にしたいのかな、と。
別の言葉で表現するなら、神であるリボンズの言葉を託される美しい巫女がルイス。
リボンズが人類の上位存在として君臨するつもりなら、そして神秘の存在であり続けるつもりなら、直接人類の前に姿を晒すことは避けるのではないかな、と思います。
彼自身が表舞台に立ってしまっては、いつかは底の浅さを見透かされてしまいますから。
▼ただ、カレルレンとストックホルムの関係は種族を超越した友情と信頼によって裏打ちされていました。
(それだけに「幼年期の終り」第一部のラストには涙腺が緩んでしまいます。……我ながら涙もろくなったなぁ、という気もしますね。初めて「幼年期の終り」を読んだ時は、あのエピソードについても「ふ〜ん」と思っただけなのです)
ルイスとリボンズの関係とは明らかに違います。
リボンズの行っているのは、意思の介入による強制的な支配。
精神的なレイプです。
それがリボンズのやり方であり、すなわち、たとえ「世界を導」く存在になったとしても、ルイスは彼の奴隷にすぎません。
▼さて。
悪い魔法使いに黒魔法をかけられて、その呪縛に囚われた姫君を救い出すのは、もちろん勇者の役目です。
その悪い魔法を打ち破るべき勇者の役割を課されているはずのクロスロードさんの現況はといえば…………

沙慈「わかり合ってるのに、なのに…………いつかボクも、ルイスと…………」

おーーーいキミが諦めてどーする、という雰囲気です。
これはもう、沙慈×ルイス狂であるせっちゃんに喝入れしてもらうしかないかも知れないですね。
「そんなことは許さない、このオレが絶対に認めない」という感じで。
そしてそこで「でも……」とクロスロードさんが目を逸らしたら、その肩を掴んで自分の方を向かせるようにして、激しくて熱い……でも言葉数はあくまでも少ない、ぶっきらぼうなお説教をプリーズ。

▼…………それにしても、リボンズ、何ともシロッコじみてきましたね。
ここでシロッコを知らない方への豆知識……と言いますか、豆台詞集。
シロッコとは「Zガンダム」の登場人物で、↓こんなことを言うような人物です。

シロッコ「フン! 生の感情を丸出しで戦うなど。これでは人に品性を求めるなど絶望的だ。やはり人はよりよく導かれねばならん。指導する絶対者が必要だ」
レコア「この戦いが終われば、人は変われますよね」
シロッコ「変えるのだよ。それをやれるのはレコア、君かもしれない」
(「機動戦士ZガンダムV」星の鼓動は愛)

そして、こんなことを言われたりもしています。

カミーユ「あなたはいつも傍観者で、人を弄ぶだけの人ではないですか!」
シロッコ「私には、そういう資格がある!」
カミーユ「その傲慢は人を家畜にする事だ! 人を道具にして!」
シロッコ「子どもが! ほざくか!」
カミーユ「それは、一番人間が人間にやっちゃいけない事なんだ!」
(「機動戦士ZガンダムV」星の鼓動は愛)

このカミーユの台詞「人を道具にして! それは、一番人間が人間にやっちゃいけない事なんだ!」ですが、某アニメで某主人公が某異能の力を使って人の心を支配するたびに感じていたことでした。
そして今は同じことをリボンズに対して感じつつあります。
ところで、カミーユの別の台詞「いつも傍観者で、人を弄ぶだけの人」。
「OO」には、リボンズ以外にもう一人いますよね、そういう人物が。
さて、リボンズと「彼女」、どちらが最後の敵になるのやら。
もっとも、「彼女」の場合、次回以降でその過去や行動の意図が明かされた場合、印象がガラッと変わる可能性もありますが。
と言いますか、変わって欲しいです。

[21-02-22]

「脳量子波が使えるのは、自分だけだと思うな」

ピーリス「ここから先には行かせん」
ミレイナ「ピーリスさん」
アニュー「なぜここが」
ピーリス「脳量子波が使えるのは、自分だけだと思うな」
  (中略)
ライル「くそっ、アニューはどこに」
刹那「こっちだ」
  (中略)
アニュー「あなたの存在を失念していたわ。Cレベルの脳量子使い、できそこないの超兵」

▼ピーリスさんかっこいー♪
……って、ち、違う。
あ、ピーリスさんがかっこいいのは違わないのですが、上記会話を引用した趣旨が違います。
上記会話から汲み取れるのは、刹那が脳量子波を使えるのでは?ということ。
ピーリスがアニューを簡単に見つけることができたのは、脳量子波を使えたから(とピーリス自身が言明。アニューの台詞もそのことを裏打ちしています)。
他方、刹那も「こっちだ」とまるで所在をすでに掴んでいるかのような発言をしてから、迷うことなくアニューのもとへ辿り着くことができました。
ということは、刹那もピーリス同様、脳量子波を使えるのでは、と考えることができますよね。
せっちゃん、順調に「変革」中みたいです。


「粒子ビームが!」「曲がっただと」

ティエリア「粒子ビームが!」
ライル「曲がっただと」
ティエリア「こ、この威力は!」
アレルヤ「この攻撃! やられるっ」
ピーリス「させるかっ!」

▼ピーリスさんかっこいー!痺れるぅー!
…………とアレルヤの心の中を代弁してみました(笑)。
何といいますか……アレルヤは戦闘中はハレルヤさんと交代すればよいと思うんです。
それはさておき。
ルイスのMA、レグナントが出した「曲がるビーム」のことですが、これはたぶんビームを反射する機構を備えたビットなりファンネルなりを放出しておいて、それを利用した攻撃じゃないかと思います。
だから、曲がって見えたとしてもあまり不思議ではない。
不思議なこと……というよりも、ツッコミを入れたいことは他にあります。

ティエリア「突破口を開く! ハイパーブーストモード! 高濃度圧縮粒子、解放!
  (中略)
  バ、バカな! ハイパーブーストが!」

ティエリアの最強攻撃すら寄せつけないルイスのレグナント。
ツッコミを入れたいのはコレです。
こんなスゴイMAをどうしてルイスに預けているの?
われらがルイスはどうみても下手……コホン、えーと……その……いささかパイロットとしての適性に欠ける女性ではないかと思うのですが。
ルイスを乗せるよりはもっとヴェテランのパイロットに任せた方が戦果も期待できるのでは…………
…………と書こうとして、気が変わりました(笑)。
ルイスがパイロットであるこの状態で、すでに太陽炉を積んだ正規ガンダム3機を圧倒しているんですよね、レグナントは。
逆に言うなら、ルイスでもガンダムを倒せる機体だということ。
そしてリボンズは言いました。
「このレグナントだってキミのために持ってきたんだ」と。
この言葉、言い換えるなら、
「キミにレグナントでガンダムを討って欲しいんだ」
ということでしょう。
なぜルイスにガンダムを討たせたいのか。
地球市民にとってガンダムは地球圏統一を阻害するテロリズムの象徴です。
そのガンダムを討ち果たしたのが、ルイスのような若くて美しい女性だったなら。
この時代の地球世界のヒロインとしての資格は十分でしょう。
言い方を代えるなら、「人類初のイノベイターとなって、この世界を導」く者としての箔がつくということです。
…………リボンズは本気なのかも知れませんね。
ルイスに地球世界を導かせたい、というのは。
もちろん、彼の「パペット――操り人形として」という条件つきでしょうけれども。

[21-02-24]
文責・てんま