『D.C.III ~ダ・カーポIII~』感想

第11話「思い出と始まりの場所」感想

風見鶏編はゲーム本編で綺麗に完結したお話。
そう思っていましたが。
リッカと清隆が初音島に上陸するシーン。
あれを見てしまうと、もうね。
風見鶏編のアフターストーリー、いけるやん!
と思ってしまうのですよ。
風見鶏編のアフターストーリーが見たくてたまらなくなっちゃったよ、と。


ゲームの舞台となっている世界は無数にある平行世界の中のひとつ。

さくら「未来に向かって世界は絶えず分岐しているんだ」
さくら「ボクが生まれない未来もあるし、ボクが過去に呼ばれることのない未来もある」
さくら「ボクという存在は、清隆の未来の中のたくさんある可能性のひとつの結果に過ぎないわけだからね」

こう作中で明言されている以上、全てが解決した後の風見鶏世界の未来は、さまざまなヒロインとくっつく世界へと分岐していくわけで。

シャルルさんと結ばれた世界の清隆は北欧に移住するのかな、とか。
姫乃と結ばれた世界は「さくら」が存在しない以外はゲーム本編とあまり変わらない世界になるのかな、とか。
サラの婿になる世界では、いつカテゴリー4の実力の持主であることを明かして、(サラを含めた)クリサリス家の親戚一同にどっひゃーと言わせるのかな、とか。
葵ちゃん、ループを繰返した末の精神年齢は何歳なのよ、と某ほ●ら嬢に対するのと同じ疑問をひっそり抱いてみたり、とか。

『プラチナ・パートナー』とは別にアフターストーリーを描いた作品も出ないかな、と。

感想その1。 さくらについて。

さくら「ボクのせいで。ボクが望んだからみんなを傷つけて。大好きなお兄ちゃんまで」
立夏「それで何もせずに逃げ回ってるの?」
さくら「だって、もうボクにできることなんて何も」

アニメに登場したこの「さくら」は、結局、いつの時点の「さくら」なのか。
風見鶏世界を経験した「さくら」なのか。
未だ風見鶏世界に「呼ばれて」いない「さくら」なのか。
(前回Cパートでリッカ・グリーンウッドとさくらが顔を合わせる場面が描かれましたが、あれはおそらく立夏に流れ込んだ枯れない桜に「封じ込めた記憶」でしょうから、この「さくら」が持っている記憶ではない可能性も高いと思うのです。)

原作では「さくら」が記憶を取り戻した経緯は実にあっさりと描写されていました。
その場に清隆が居合わせるわけでもなく、「さくら」による「戻った」という事後報告のみ。
何とも拍子抜けしたことを覚えています。
ちなみに、風見鶏世界の「さくら」にはかなり複雑な背景がありそうです。

清隆「その絶えず分岐し続ける世界のなかのたったひとつの可能性の世界から、お前が呼ばれて来たってわけか……」
さくら「たったひとつとは限らないよ。ボクは、いくつかの近しい未来から同時に戻ってきたボクの複合体かもしれない……」

複数の「さくら」としての――複数の人生の記憶があるからこそ、このような発言になったのでしょうし。
(さもなければ「たったひとつとは限らない」とか「ボクの複合体」という発言は飛び出さないでしょうから。)
もしかすると、アニメではこのアニメ版の「さくら」が合一することで完全体「さくら」となって、記憶を取り戻す、という流れになるのかな。

つまり。
「さくら」が風見鶏世界に「呼ばれる」までが描かれる?
だとするなら、アニメは「ゲームの舞台となった世界」の「一つ前の(直前の)世界」という理解でいいのかな?

感想その2。
リッカ・グリーンウッド。

かつて「別れ」の時に当たり、「孤高のカトレア」リッカ・グリーンウッドは「『今の私たち』がまた再会する方法」を提示しました。

リッカ「桜の魔法が発動すると同時に、皆の記憶を枯れない桜の中に閉じ込める魔法を使うわ」
リッカ「いつか私たちがそろって再びこの枯れない桜に触れた時、その魔法は発動し、私たちの約束は果たされるってわけ」

けれど、思い出したのは立夏だけで。
アニメでは見事に失敗しちゃったなー、と。
これはおそらく「後ろ向きなさくら」という要素がエラーの原因になったのではないかと。
と、適当なことを言ってみる(笑)。
もっとも、まだ最終話が残っています。
ラストで皆が記憶を取り戻す、というのもありだよね、と。

と言いますか、そもそもアニメの立夏は記憶を回復しすぎ、という印象があります。
回復した記憶の質と量が半端じゃない。
ゲームでは断片的に覚えている内容をさくらの回想で補完している――そんな様子でした。
でもアニメの立夏の場合、ジルとの思い出も克明に覚えているようで、つまり――
完全にリッカ・グリーンウッドと化してるやん!という感じ。

それで思ったこと。
ラストシーン。

夫婦は「二世の縁」とは言いますが。
かつて想いを交わした相手と次の人生でも再会を果たす。
そして惹かれ合う。

清隆を見つめて微笑む立夏=リッカの場面。
あの時、彼女の胸に去来した想いはどのようなものだったんだろうな、と。

〔平成25年3月21日/文責・てんま〕

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