『D.C.III ~ダ・カーポIII~』感想

第2話「あたたかなところ」感想

2069年[1]の初音島が舞台……のはずなのに、何だか未来には見えない世界ですが、紀年法にも仏暦、ヒジュラ歴、皇紀(神武紀元)など、色々ありまして、例えば皇紀ですと今年は2673年にあたります。
すなわち、『D.C.III』世界の「2069年」が我々の使用している「キリスト紀元の2069年目」を意味しているとは限らないわけで、そのあたりは気にした方の負けだよねっ、と。

ま、こんなことを書くこと自体、一度は「気にした」ことがあるわけなのですが(笑)、以下の考え方で(無理矢理)納得さー。

そもそも、近未来世界だからといって、それっぽいガジェットを安易に出してしまうと、実際にその年代の人間が見た場合、いろいろと哀愁を感じてしまうことも多いでしょう。
例えば、恒星間航法を実現した文明世界が舞台のはずなのに入力装置として紙テープを使用している某SF小説のポジトロン脳コンピュータや、2015年が舞台なのにスマホどころか巨大で厳(いか)つい携帯電話を使用している某アニメ作品の女子中学生などなど。
時代性を感じてしまい、名作なのに思わず微苦笑を浮かべてしまいます。
それならいっそのこと、『D.C.III』のような日常と超常現象がメインの作品の場合、SF(っぽい)ガジェットは潔く物語の舞台に出さないのが正解じゃないかな、と思ってしまうわけなのです。
「●●年」という年代設定自体、「前作との間で世代交代がありましたよ~」というアナウンス程度の意味しかないのでしょうし。
あ、ちなみに美少女ロボットはSFガジェットではなくてファンタジーの存在という方向で。

(もっとも、いわゆる「SF黄金時代」の読者はどうだったのか知りませんが、そもそも現代人でロボットというガジェットにSFの真骨頂であるsowを感じる人はそうそういないでしょうけれども。)

それはさておき、今回も原作との異同などに触れながらの感想です。

感想ひとつめ。オープニングのこと。
まず思ったこと。

こうしきしんぶんぶは ふしぎなおどりを おどった!

みんな楽しそうでいいよね、と。

オープニングはさらとるる姉という組み合わせが意外で新鮮でした(さらとペアになるのは親友の姫乃、という印象が強いので。ただし、これは風見鶏編の印象。初音島編では出会ってからもう一年近く経っているはずなのに、未だに苗字で呼んでますね)。

それと、波打ち際の相合い傘が酷いことになっている(笑)。
公式新聞部の面々が対抗意識を燃やし合って、次々と互いに×印を付けていったのかとも思いましたが、よく見ると全員の名前の筆跡が同じような気もします。
つまり、同一人物の仕業。
となると、さくらあたりの悪戯なのかも。

ところで、全員の名前に×印=アニメでは誰のルートにも入らないよ、という暗喩なのかな。

感想ふたつめ。
るる姉のこと。

(屋上で)
るる姉「あたし、良いお姉さんかな。タカくんがあたしのことをるる姉って呼んでくれた、あの日からひとりぼっちだったあたしはお姉さんになれたの」
るる姉「家族なんだから遠慮は駄目だよ」

(バスルームで)
るる姉「か、家族なんだから、お、お風呂くら良いじゃない。そんなに意識しなくても」
るる姉「でもいいよね、こういうの。本当は恥ずかしいけど、でも心が繋がってる気がする。ぽかぽかしてくる」

という一連の台詞。
彼女はなぜこんなにも「家族」の「繋がり」にこだわるのでしょう。
バスルームにおける清隆とのやり取りにしても、表面的に見るならただのお色気シーン(「お色気」というワード、死語というか古語だよなあ。使うのがちょっと恥ずかしい。でも、ちょうど良い代替が咄嗟に思いつかないのでこれを使用します。)ですが、るる姉の台詞も一緒にして考えてみると、彼女が今回あのように振舞った理由は、つまるところ「家族」への異常なまでの執着心に帰するように思えるのです。
風見鶏編のシャルルならそうなる理由も分かりますが……初音島編のるる姉には過去にいったい何があったというのでしょう。

原作の清隆は、るる姉について、

「俺はまだ隣に姫乃が住んでいてくれたから、ひとりぼっちになるってことは少なかった。」
「けど、こっちに来る前のるる姉は、両親が出かけている時はひとりで過ごしている時間が多かったらしい。」
「スキンシップが激しいのだって、多分、小さい頃ひとりで過ごす時間が多かったことの反動じゃないかな、なんて少し思ったりもする。」
「だから、俺はちょっと困るな~と思いつつも、るる姉のスキンシップを強く断ることができなかったりもするのだ。」

と述べていました。
ですが、そうであるにしても、今回のBパートの彼女はやり過ぎ、過激すぎだと思えるわけで。
原作の清隆はこの件について、

「願いを叶えてくれるという枯れない桜の魔力のせいなのか!?」
「誰かが無意識のうちにこんな展開を望んでしまったとか、そういうことなのか!?」

清隆の動揺ぶりからして、るる姉がBパートのような行動に及んだのは、数年間の共同生活のうちでも今回が初めてだったのだと思います。
第1話の「一緒に寝よう」も今回のBパートの行動も枯れない桜が再び咲いてからの出来事です。
つまり、蘇った枯れない桜がるる姉の感情や行動に影響を与えて、今までの彼女とは別の規範で振舞わせている可能性がある。
言い換えるなら、枯れない桜が復活したことを契機に、風見鶏のシャルルがるる姉の裡に蘇りつつあり、そのシャルルの影響で、るる姉が「家族」に対して尋常ならざる思い入れと執着心を抱いて、今回の振舞いに及んだ……のかな、と。
でも、清隆の無意識の助平心を枯れない桜が察知して叶えてあげた、という解釈もありかな、という気もしております(笑)。

感想みっつめ。
エリザベス、四季、巴さんのこと。

みんなこっちへ来ちゃったのかぁ、と。
原作で名前の挙がっていた四季はともかく、正直なところ、エリザベスは意外でした。
でもやっぱり生徒会長というよりも理事長という貫禄です。
エンディングで確認したところ、英理・アンジェラ・アーサーという名前みたいですね、こちらのエリザベスは。

それにしても、何だろう、あの国際色豊かな生徒会室。
とても日本の学校とは思えません(笑)。

感想よっつめ。
さくらのこと。

気配を感じて清隆が振り返ったら、そこには誰もいなかった。
この場面で、さくらはゴーストみたいなものなのかな、と思いました。
Cパートでも桜吹雪の舞う深夜の商店街をただ一人彷徨する姿が描かれていましたしね。
ですが、次回予告ではごく普通に清隆と接していたわけで。
誰の目にも見えない、ゴーストに類似した存在ではない。
そのことは確定。

ところで、次回予告のさくらの台詞を幾つかピックアップすると、

「家族」
「ねえ、ボクはなんでここにいるの?」

これらの台詞から、アニメは清隆達の恋愛ではなく、さくらの自分探し……と言いますか、彼女の「家族」への想いがメインテーマになるのかな、とそんなことを思いました。
(上で引用したバスルームでのるる姉の台詞も、原作の「イトコなんだから良いじゃない」が「家族なんだから良いじゃない」に微妙に改変されていましたし、アニメでは「家族」というワードが強調されているような気がします。)
そうであるならば、

「急にね、寂しくなったんだ。ボクの大好きだった人達はどんどん結婚して、子供を作って幸せになっていくのに、ボクはいったいいつまで一人ぼっちでいなきゃならないんだろうって」
「そうしてボクは願ってしまったんだ」
「ボクにも家族が欲しいですって」
(『D.C.IIS.S.』10話「夢の終わり」)

かつて彼女が深い哀しみと共に告げたこれらの言葉にも繋がりますしね。

ここでもう一度オープニングを振り返ってみます。
ラストに映る黒板の直前のふたつのカットは明らかにるる姉――と言うよりも風見鶏編の「シャルル」関係のもの。
そして作中での存在感を強めつつある「さくら」という要素。
「シャルル」と「さくら」、どちらに共通するのも「家族」とその「喪失」。

そういえば『D.C.IIS.S.』で姿を消した純一とさくらはイトコ同士でしたっけ。
るる姉と清隆の関係に被ってしまいますが、アニメオリジナルの展開がこの先に来るとするならば、どういうストーリーになるのでしょうね?
るる姉と清隆の関係性を見ているうちにさくらも自分と純一のことを思い出す……とか、その程度のことしか今の段階では思いつきません。

感想五つめ。
今回、たぶんこれが一番大事。
さらと立夏のこと。

公式新聞部会議中――
「あのー」と挙手したさらに対して、
優しく微笑んで「どうぞ」と促す立夏。

何ということもないやり取りですが、この直前の、「ありがとう」と笑顔を見せる立夏と嬉しそうに彼女を見つめるさらの場面も合わせて、ピピッときましたね。

立夏さらはありだ、と。

「後輩を猫可愛がりする先輩」
「その先輩のことが大好きな後輩」
というパターンは大好物なのですよ。
……まあ、清隆との関係を除けば、原作のサラは姫乃と、リッカはシャルルと連(つる)むことが一番多かったわけですが、ここはアニメオリジナルの展開を希望(笑)。



註[1]
 原作の"Weather Vane"と"Zero"のオープニングでは、一度小さく「2069」と表示されてから「2068」という通常表示に変わります。
また、アニメの第1話や第2話で画面に映っていたカレンダーでは、3月3日が日曜日になっていました。そして、現実の2069年3月3日も日曜日です。
だから2069年と推定。
……「上でいろいろ書いているけど、やっぱりこの世界はキリスト紀元を使ってるんじゃないの?」というツッコミはしない方向でよろしく(笑)。

〔平成25年1月14日/文責・てんま〕

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