『D.C.III ~ダ・カーポIII~』感想

第7話「あまえられるところ」感想

今回はさらのしっと混じりの冷ややかな視線を愛でる回……なんて言ってみたりして。

それにしても、いつの間にか、
「不潔です!」
が、さらの口癖になっているような気がします。
でも、これって、言うほど原作ゲームで口にしていた台詞かなー?
何にせよ、潔癖傾向のあるキャラに味付けされるのは好ましいことだと思います。
(単にそういう性格のキャラクターがマイ・フェイバリットというだけでございます、はい/笑)

今回も原作との異同を絡めた感想です。

感想その1。
前理事長の写真を見て論評し合う公式新聞部。

るる姉「確かに似てるといえば似てるけど」
さら「年齢から見ても、偶然だと思います」
立夏「普通に考えるとね」

や、だからそこは幼女が「理事長」として紹介されていることにも疑問を持とうよ(笑)。
ただ、最後の立夏の台詞は少し意味深、かも知れません。
なぜなら「カテゴリー5の魔法使い、孤高のカトレア」としての記憶を踏まえた上での発言、という可能性も絶無ではないですから。
ああ、でもその場合、立夏さんなら我慢できずに「魔法で肉体年齢の進行は止められるのよ」とか何とかどや顔で言っちゃって「立夏さんのおもしろ設定」扱いされるという落ちの方があり得るかな。

ただ、思案顔で

立夏「でも、清隆の気持ちがわかるのよね」

と口にした時の立夏の脳裏に去来していたものは何か、ということは気になります。
彼女が「さくら」に何らかの疑念を抱いているらしいことは、この台詞でほぼ確定したと見てよいと思いますから。

感想その2。
「思った通りだ。すごい熱じゃないか」とどや顔の清隆さん。
けどしかし。

立夏「清隆」
るる姉「体調が悪いことに気づいたのは立派だと思うよ?」
姫乃「でも、いきなり女の子におでこをくっつけるのは」
さら「不潔です」

やっぱり吊し上げられてしまうのでした。
それにしても、ジト目になってる皆の表情が可愛い。

それはさておき。
さらの不潔です発言について。

他の子が自ら積極的にモーションをかけている関係上、清隆のいわゆる「ラッキースケベ」が発動する対象となるのは基本的に「さら」なんですよね。
(なぜなら、さら以外の他の子の場合、自分からアプローチしている以上、清隆との間に起こる出来事は、偶然の所産である「ラッキースケベ」とはいえません。他方、さらの場合は自ら積極的にスキンシップを求めた行動を起こしてはおらず、清隆との間のその種の出来事はすべて「偶然」の結果にすぎません。)
ドラマCDでも、こんなやり取りがありました。

姫乃「に、兄さん、もうちょっと奥に詰めてください」
清隆「詰めてくださいって言われても、もうぎゅうぎゅうで」
さら「ふぇ……せ、先輩、変なところ触らないでください」
立夏「こら、清隆。どさくさに紛れて何さらの身体触ってるのよ」
清隆「不可抗力ですって。姫乃が俺の身体を押すからそれで」
るる姉「もう、しょうがないなあ、タカくんは。女の子の身体が触りたいんだったら、あたしに言ってくれればいいのに」
清隆「だから違うってば」
  (中略)
立夏「こら、シャルル、どさくさに紛れて清隆にくっつかないの」
(ドラマCD Vol.3)

るる姉はある意味、完全に別格の存在ですね(笑)……というのは置いておくとして。
さらが清隆の行動に警戒心と不審の念を抱いても、それは仕方の無いことではあるでしょう。

他方、清隆の立場は……ほら、アレです。
「好感度そのままにNew GAME」
彼女たちとのかつての日々と互いに抱いていた想い。それが感情の根底にある(っぽい)。
だから無意識にああいう風に振舞っちゃうんだろうし、女の子の方も自然に受け入れてしまうんじゃないかな、と。
(ただし、これは各人に風見鶏の記憶が蘇りつつあることが前提の仮定なので、風見鶏編の痕跡を注意深く排除しているようにも見えるアニメの場合はどうなるんだろう、という疑問はあります。)

感想その3。
おんぶ。
葵の病弱設定思い出しました。
アニメの葵は元気な笑顔という印象が強いので、すっかり失念していましたよ、と。
るる姉クラスのにくしょくちゃん、というイメージもあるけれど、周囲に対する気遣いができて、自分自身のことでは控えめになる……そういう健気なパーソナリティの持主でもあるんですよね、基本的に葵は。

葵「いや~、ひとり暮らしは色々と物入りですので。それに働くの、大好きですし」
清隆「でも、自分の身体だって大事にしないと」

この清隆の台詞の後、少しの間、葵は沈黙してしまいました。
自分のことを気遣って貰って和んでしまったからなのか。
それとも、本当は彼女にはもう自分の身体を「大事に」する理由はないからなのか。
つまり、(風見鶏の時と同じように)この先、長く生きることのできない自分自身の運命を知っていたから、清隆に答えることができなかったのか。

これはある存在に関する判断の一助となりそうな材料でもあります。
彼女の「家族」のことです。

ドラマCDでは一応彼女がこの島に来た経緯と一人暮らしをしている理由を説明しています(ドラマCD Vol.3参照)。
清隆はあれで納得したようですが。
うーん。

葵「生活費は全部自分で稼ぐって約束して、何とか初音島に来て一人暮らしをする許しを貰ったんです」
(ドラマCD Vol.3)

この条件で家族を説得した、と言ってましたが、その言葉をそのまま信じるにせよ、彼女にはかなりシリアスでヘビーな背景がありそうです。
なぜなら。
病弱というのは島に来る前から既にわかっていたことですよね。
ということは、葵の言葉の通りなら、仕送りもせずに病弱な娘を放置している家族。
それが葵の家族である、ということになりますから。

そして何よりも。

葵「この部室がわたしにとって一番の家なのかも知れない。立夏さんはちょっと強引なところがあるけど、リーダーシップ抜群な一番上のお姉さん。(中略)そんな新聞部のみんなと一緒に過ごす新聞部はわたしにとって特別な部活で、心安らぐ場所で、やっぱり今のわたしにとって一番の家だ。だって、こんなにも安心して(以下略)」
(ドラマCD Vol.3)

新聞部の面々を「家族」と見なすくらい、葵は彼や彼女たちに愛着を抱いてしまっています。
葵は立夏やるる姉、姫乃、さら、清隆とよほど馬が合うのでしょう。
いえ、葵だけではなく、全員が全員に対してそれぞれ深い親愛の情を抱いているのだと思います。
そうでなければ、「心安らぐ」「こんなにも安心」できる場所だなんて思えないでしょうから。
だけど。
そうであるだけではなく、何よりも葵が初音島に来る以前から家族の愛情に飢えていたため、と想像を逞しくすることもできると思うのです。

……なんて言ってみたりして。


以下、続きます。

〔平成25年2月17日/文責・てんま〕

感想その4。
怯える幼女。

さくら「あの……ボクは……さくら……」

硬い表情で、笑顔の葵と向かい合います。
ただ、この反応は(それと前回Cパートで清隆の背中に隠れた行動も)、葵を怖がっていたのではなく、もしかすると今まで清隆以外の他の人達には自分の姿が見えなかったのに、
「どうしてこの人達にはボクが見えているの?」
という戸惑いのせいなのかも知れないな、とも思いました。
(もっとも、さくらの姿が初音島の他の住民たちに見えているかどうかについては、確たる判断を下せる描写はまだされてないのですが。)

感想その5。
拗ねるさら。

葵の看病に行くから今日は部活を休む、と清隆がさらに告げる場面は、原作では、

「さら『今日は先輩ひとりの方が葵ちゃんも喜ぶと思いますし』」
「清隆『ん? そうか?』」
 (中略)
「さら『そうなんです。先輩はバカだからそう思わないかもしれませんけど』」
「清隆『バカってひどいなあ』」
「さら『バカはバカだからバカなんです。ベーッだ』」

色々な意味で鈍感な清隆に対して、拗ねたさらが鬱憤を晴らすかのようにからかう……という感じのやり取りがなされていました。
あくまでも軽い調子です。
他方、アニメでは以下のような台詞をさらが口にしています。

さら「あの、聞いてもいいですか。もし私が困っていても、同じように優しくしてくれますか」
清隆「そんなの当たり前だろ」
さら「そうですか」

逆光が射していて、しかも目が隠れていると、表情がわからないだけに、シリアスなシーンに見えてしまいます。
ここはさらが拗ねているだけの場面のはずなのに。
ただ、「そうですか」と言って顔を背けるさら、その様子にはっとなる清隆……意味深な場面に見えないこともないんですよね。
何かシリアスな事情が「さら」にはある、と勘違いしそうな身振りです
それとも本当に何か深刻な事情があるのかな、アニメ版では。
(あるいは原作でもそういう裏設定があって、『プラチナ・パートナー』で何らかの秘密が明かされるのかも。)
(でも、そうだとすると、「風見鶏編で全てが解決した後の、皆が幸せに暮らしていける平穏な世界」というわけでもないのかな、『D.C.III』の初音島編は。)
(や、そもそも、呪いの木とも言える「枯れない桜」が復活した状態にありますし、いつどんな深刻なトラブルが発生してもおかしくない状況にあるわけでした、今の初音島は。)

感想その6。
妹がいっぱい。

アニメでは省略された偽妹との会話(原作版)。

「葵ちゃん、俺に対して無邪気すぎるほど無防備だしな。」
「その接し方は学校の先輩と言うよりも、家族に対するものって言ったほうが近いのかもしれない。」
「実際、理想のお兄ちゃんって言われてるわけだし。」
 (中略)
「葵『これで今日こそは安心して眠れそうです』」
 (中略)
「清隆『えーと、もしかして、葵ちゃんの調子が悪かったのって寝不足が原因だったりする?』」
「葵『それもあると思います。ここ最近は、なんか変な夢を見てるようで、朝起きてもあまり眠れた感じがしませんでしたから』」

桜が咲いて、毎晩奇妙な夢を見るようになった。
そのせいで不安になり、精神的に参ってしまい、普段と違う行動をとるようになった。
具体的には、清隆に頼り、依存する度合いが強まった。
……というのが、原作における姫乃や葵たちが積極的になった(ように見える)理由のひとつでした。
ですが、アニメでは同じ場面で、

葵「病気の時って心が不安になりますよね。誰かにそばにいて欲しい、ぬくもりを感じたいって。だから、お願いを聞いていただいて、ありがとうございます」

添い寝を願った理由をこのように語っています。
徹底した風見鶏世界の痕跡の排除。
「この世界」の根幹に関わる理由がある……という風にも考えられないこともないですが、やはり、アニメ2期に備えて風見鶏編を温存するため、というのがその一番の理由なのでしょうね。それならそれでどんどん初音島編オリジナルストーリーを入れて欲しいです。
できれば今まで発売された5本のドラマCD級のクオリティのものを希望。

ところで、ふと思ったのですが。
魔法で肉体年齢の進行は止められる。
例えば「さくら」のように。
これは風見鶏編で明言されたことです。
ならば、現代の「正義の魔法使い」音姉はどうなのでしょう。
『ダ・カーポII』よりおよそ20年の時を経た今も、往時の若い姿を留めたままなのでしょうか。
と言いますか、第1話のエンディングで姿を見せたのは何だったのさー、と(笑)。

〔平成25年2月22日/文責・てんま〕

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