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シアルフィ軍はアグスティ城に駐屯している。
シグルドの軍司令部は実質的にアグストリア占領政府として機能していたが、帷幕にはノディオン王家の姫君も参加しており、現在のアグストリアの複雑な内情を窺わせるものだった。
グラーニェから書簡が届いた。
『アレスの誕生パーティを開くから、お城のほうへ戻ってください』
要約すればこのような内容だった。
もうそんな時期なのねとラケシスは感慨に浸った。つい先頃生まれたばかりの乳飲み子だったのに、という気分だ。
(シグルド様の軍に参加して以来、お義姉様にもアレスにもずいぶん長くお目にかかってないけれど──アレスはどんな風に成長したのかしら?)
義姉と手紙のやり取りは頻繁に行っていたが、やはり百聞は一見に如かずである。エルトシャンの縮小版と専ら評判のアレスを見るのが、今からとても楽しみになってきた。
「……あら?」
つらつらと義姉の手紙を読んでいたラケシスの視線がある文章で止まった。
『そうそう、青髪の騎士殿も連れてきてくださいな。彼とはレンスターで昔馴染みですし──』
以下、色々と書かれていたが、要するに(アグスティ城からノディオン城までの行程──二人で一緒に来ることのできる絶好の口実を提供してあげるから、上手くおやりなさい)ということだ。直截に書かれてはいなかったけれど、そうに違いない。ラケシスは決めつけ、シグルドとキュアンの元へ赴くことにした。
もちろん、アグスティ城を一時的に離れる許可と護衛として青髪の騎士を借りるお願いのためだ。