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「でもね、フィン殿」
しばらくとりとめの無いお喋りをした後、ラケシスが思い出したように言った。
「私にとっても、この朝のお稽古は意味のあることだと思います」
「?」
フィンが疑わしそうに王女を見やる。
「私が素振りしている様子をぼんやり眺めていても、あまり意味は無いですよ。見取り稽古というのも一応ありますが」
時間の無駄では、と暗に言いたいらしい。
「そうではないの」
ラケシスは柔らかい笑みを浮かべながら言った。
「だって、練習で疲れたフィン殿にライブをかけて差し上げる──」
何しろ通常の三倍は重量のありそうな練習用の特製槍を一万回も振るのだ。素振りとはいえ、かなりハードな練習と言えた。
「──これって十分、魔法杖を使う訓練になっていると思いませんか?」
以前から考えていたことだけに、滑らかに言うことができた。フィンは、一瞬だけ思慮深そうに瞳をきらめかせる。そして、
「なるほど……それなら一緒に──お互いを高めあっていけますね」
フィンは頷きながら愉快そうに微笑した。
「ハイ」
王女は澄まし顔で返事した。心の中で付け加えながら。
(それに──それにね。あなたとこうして二人きりでいられるのですもの)