ファン小説(FE聖戦・親世代)

2

 翌朝──
「兄上、お久しぶりー」
 ノックの音がしたかと思うと、いきなり三人の部屋の扉が開いた。
 押し止める暇もなく少女が飛びこんでくる。
 と、不意に彼女は足を止めた。
「な、何これ?」
 室内の惨状に目を丸くする。
 空瓶が散乱し、ゴミ袋の山が崩れ、足の踏み場もない。
 部屋の主たちは──と見れば、床の上に屍(しかばね)然たる状態で転がっていた。
「エ、エシュリン。おあよ……」
 ノロノロ身を起こしながらシグルドが挨拶した。
「エスリン嬢……? ラケシスじゃないのか……良かった……」
 彼の傍らに横たわったまま、エルトシャンが呟く。そして、気力を振り絞るように、
「こんな様子をあの子に見せるわけには……寮の談話室で迎えるか……だが、その前に着替えを……」
「兄さま、わたくしがどうかしまして?」
「ラ、ラケッ!」
 エスリンの後ろから突然顔を覗かせた妹を見て、エルトシャンが仰天して跳ね起きる。
「な、なぜお前がここに……」
「一緒に来ちゃいましたー」とにこやかにエスリン。
「わたくしたち、お友達ですもの」とラケシス。
「あ……う……お……」
 エルトシャンは衝撃のあまりまともに言葉を紡ぐこともできないようだ。
「『あうお』? 何かの暗号ですか、兄さま」
「……」
 無邪気に輝く妹の瞳を見て、エルトシャンはガックリとうなだれた。

 エスリンの説明によれば、二人が出会ったのは一月前らしい。

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