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天空より無数の火球が降り注ぐ。
直撃を受けた者が一瞬で火柱と化す。
あるいはその巨大な重量に頭部を潰され、人としての原形すらとどめずに倒れる。
凄まじい火風が吹き荒れ、凶悪な熱は人々の肺をえぐる。
もはや逃れる術は残されていない。
それでもかれらは気力を失わず、剣を振るい呪文を唱える。
戦友たちが次々と倒れる中、懸命に指揮を執る青髪の青年。
本来なら彼こそが世界を導く資格をもっていたのだが──
深甚な悔恨の感情が私を捕らえて離さない。
眼前に繰り広げられる悪夢世界。
その責任は半ば以上、私にあるのだから。
私はこうなることを知っていたのだ。
ブラギの──神の視野を借りることを許されたあの時に。
なのに──
以前、私は青髪の指揮官に語ったことがある。この戦いの背景について──
「そうだったのか。やはりすべてはレプトールの仕業……」
「いや、彼の野望だけではありません。その背後には、実に恐ろしいものが蠢いているようです。ブラギ神さえ見通せぬほどの邪悪な意識が存在しています……」
私は彼にすべての真実を告げなかった。来るべき未来を見透かしていたというのに。
だが、その一方で預言が成就したことを満足に思う私もいる。
人でありながら神々の計画に身を投じることのできた昂揚感を伴って。
神々にとってこの殺戮は次の時代への布石。
やがて光を継ぐ子たちが参集することだろう。そして至福の千年王国が実現する。
肺に注ぎ込まれる熱風に苦悶しながら、私はワープの杖を振っていた。戦友たちを逃すという名目で。
だが、これも神々による予定調和に向けた奉仕──
冷静な観察者がいるならば、転送する者を私が注意深く選別していたことに気づいたはずだ。
「生あるものが死に、形あるものが失われるのは仕方のないこと。しかし無になるわけではない」
自分の口が何か喚いていることに気づく。けれど、何を言っているのかわからない。
神々への呪詛?
神々への賛美?
……友への懺悔?
頬を伝う涙。そして、哄笑。