ファン小説(FE聖戦・親世代)

2

 時間の経つのは早い。それ以上に運命の流転も──

「流れ流れてシレジアへ」
 節をつけ、歌うようにラケシスが言った。シグルド軍に従って、ついに北方の辺境へ追いやられてしまった。
 けれど、悲壮な雰囲気は無い。常勝将軍であるシグルドがいずれ捲土重来を果たすと確信しているからだ。
「北国とはいえ、やはり夏は暑いね……大陸の中原よりは涼しい方だとは思うけれど」
 王女の髪を弄りながらフィンが呟いた。
「……いや、暑いのは二人の体が密着しているせいかも知れないね」
 フィンとラケシスは木陰に膝を揃えてしゃがんでいた。ラケシスは青年の肩にもたれるようにして身を委ねている。
「そう思うのだったら、手を離してくださいな」
 ラケシスが苦笑した。フィンの手はラケシスの肩を抱き、離そうとしないのだ。
「気が向いたらね」
 フィンはラケシスの剥き出しの肩を撫でながら言った。
「磁器のような手触りだ」
 嬉しそうに感想を告げる。
「とても気持ち良い」
「もう」
 ラケシスは赤くなった。
「その昔『裸を見られた』と言って、乙女みたいに恥らっていたフィンはどこへ行ってしまったの……あん」
 いきなり指先で頬をつつかれ、吃驚してラケシスは口をつぐんだ。
「それは違うよ」
 フィンが体の向きを変えた。両腕を伸ばし、後ろの木と自分の体で王女を囲むような体勢になる。
「あ……」
 何をされるのだろう……ラケシスは潤んだ瞳で彼を見つめた。
「あの時は……貴婦人に裸を見せるのは失礼に当たると考えて焦っただけだ。真っ当な騎士のすることではない。そうだろう?」
「だったら……」
 ラケシスが赤い顔で言った。
「今やっていることはなぁに? お姫サマを身動きできなくするなんて……立派な騎士の振舞いと言えるのかしら」
 フィンは微かに笑った。そしてラケシスの耳元に囁く。
「だけどきみは……王女である前に私のモノなのだろう?」
 ラケシスの肩がピクッと震えた。フィンの手がサラ…とラケシスの髪を鋤く。
「答えてごらん」
「……はい」
 ラケシスはしおらしく頷いた。
「よろしい」
 フィンは満足そうにラケシスを見つめると、手を伸ばして王女の顎を持ち上げた──

<Fin.>

[14-08-03]

HOME | ファン小説(FE聖戦の系譜・親世代)